17 ページ18
──
｢ふふっ、いっぱい買っちゃった｣
｢……買いすぎなんじゃ……？｣
カステラ、ケーキ。
洋菓子が紙袋を覗けば行儀よく並んでいる。
一口、口にしただけでも甘そうだ。
｢みんなと分けるから大丈夫よ｣
｢そうですか……｣
甘味が苦手なひと達が頭の隅をよぎったが、きっと彼女が食べさせるだろう。
洋菓子店から出ると、満足げに微笑む彼女から、紙袋を緩くひったくり左手に持ち替える。
｢わたし、持つけど……｣
｢いいんですよ、｣
彼女に荷物を持たせるなんて気が引ける。
というか、僕の矜持が許さない。
それを表すかのように彼女の右手を握れば納得したのか、彼女はそれ以降そのことについては何も言わなかった。
だけど。
｢あ、今の小田切さんだ｣
｢…………｣
｢神永……なんで女性客を口説いてるの……｣
｢Aさん……｣
｢……なに？｣
｢通りすがる度に誰が居たとか言わないであげてください｣
折角、変装してるのに悪びれることも無く次々と機関員のメンバーを当てていくものだから、見てるこっちが可哀想になってくる。
見破られたときの機関員の表情といったら。
絶対に見破れないであろうという自尊心はガタ崩れなんだろう。
顔が少しだけ青ざめていたのだ。
｢えー……、だってみんなバレバレなんだもの……。洋菓子店に居たのだって波多野だし、あれ靴底に細工して髪を撫で付けてるだけだし。あ、今のは福本さんだ。眼鏡掛けてへらへらしてるけど目元が福本さん｣
そう軽く眼を向けて彼女が言った瞬間、福本さんらしき人物が日本人にしては珍しい長身の体をびくりと揺らした。
ああ、お可哀想に……。僕だって福本さんかどうかわからない変貌ぶりだったのに。
｢あ、でも｣
｢ん？｣
｢実井のは見破れないかも｣
｢なんでですか？｣
｢なんにでも成れそう……｣
｢…………？｣
｢やっぱりなんでもないわ｣
歯切れの悪いことを口に出した彼女はそれ以降あまり喋らなかった。
──
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
結花(プロフ) - そらさん» コメントありがとうございます！そういってくださるなんてとても嬉しいです！更新頑張りたいと思います！ (2016年5月11日 23時) (
レス) id: e4f52b721c (このIDを非表示/違反報告)
そら - お話とっても面白いです！更新頑張ってくださいね！ (2016年5月9日 22時) (レス) id: bddda4b7cc (このIDを非表示/違反報告)
結花(プロフ) - かみつれさん» コメントありがとうございます！！ 面白いだなんて凄く嬉しいです！更新頑張りたいと思います！ (2016年5月3日 19時) (レス) id: e4f52b721c (このIDを非表示/違反報告)
かみつれ - 更新楽しみにしています！ (2016年5月3日 0時) (レス) id: 51c4bbe9fb (このIDを非表示/違反報告)
かみつれ - とても、面白いです！ (2016年5月3日 0時) (レス) id: 51c4bbe9fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：結花 | 作成日時：2016年4月22日 0時
