ふりむかないで【菅原孝支】 (ページ5)

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なんだか、ねっとりとした感覚が体にまとわりついて、眼を醒ます。
カーテンの外側は、まだ暗闇。
起き上がったと思えば、首筋に何かが流れた。見たくなくて、手だけ触れてみると溜息を吐いた。

「魘されてた……？」

一番嫌な起き方だ。
服はまとわりつくし、頭がすっきりしない。
こんなことは覚えてる限り、指で数えられるぐらいしかない。

だけど、なんだか今日は体が少し前より、軽くなった気がする。肩を回してみると、なんとなくそんな感じがした。
緊張が張り詰めていたのがとれたような、そんな感じ。

何か自分が変わっているような気がして、堪らない。
まばたきをすれば、涙が。

なぜか止まらない。
手の甲で拾っても溢れて、胸の中心が痛くなる。心というものは、頭にあるはずなのに心臓と連動しているような既視感を覚える。

とにかく、哀しくて、悲しくて。理由はよくわからないけど、涙を流した。

＊

気がつくと、流れていた涙は自然と止まった。今さっきのは何だったんだろう。と思い自分を覚醒させるように、頬を両手で軽くぺちっと叩いた。

まだ、朝練がある時間までたっぷり時間があるので、まだ夢の中にいる両親に気付かれないように、足音を立てずにお風呂場まで行って、シャワーを浴びた。

なんだか、大事なひとが頭の中から消えた気がして、頭から被ったシャワーと共にひと粒だけ無意識に涙が流れた。

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