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彼女のひんやりとした手を握り、連れてこられた場所は誰も来ることがないように思われる中庭の外れ。
フェンスに絡むありふれた蔦に、濃い青色をした名前の知らない花。ひと言でいってしまえば、幻想的だ。
手入れされていない草の匂いがして、息を思いきり吸い込んだ。
「あ、あった！」
彼女が小走りになると同時に俺は引き摺られていく。少し足場の悪い地面は、俺の足を引きずり込もうとするけど、彼女は難なく向日葵へと向かっていった。
彼女の背丈より少し高い向日葵が、目の前に現れる。
日陰の環境の中、咲いたのか。花の向きは俺達へ真正面ではなく明後日の方向へと咲いていた。緑色の影と神々しい木漏れ日の中に、君臨する向日葵は生命力に溢れていて、なぜか関心してしまう。
「凄いな……」
「凄いでしょ？」
誇らしげな彼女の顔。
彼女はにこにこしていて、雰囲気から明るい暖色系の花が飛んできそうだ。
うっすらと汗が引いていく。
「向日葵ってねぇ、若い成長期のときには太陽の方へ向いて成長するんだけど、完全に咲いてしまったら東に向いてしまうんだって。だからね、花言葉が、あなただけを見つめる。っていうんだって」
「ねぇ、こう……」
彼女が俺の方へと振り向くと顔を向けると同時に、唇を重ね合わせた。
彼女が苦しそうに背伸びしながら、制服のシャツを掴む。
「すきありっ」
唇を離して、いたずらっぽく笑って魅せたら彼女は、完璧にショートしてしまった。
口を抑えて林檎のように真っ赤になっている。
「あ、え、……」
「ふふふ」
自分から仕掛けておいて、なぜだか可笑しくて笑ってしまった。
彼女が、「もう……っ」と言って軽く腕を殴られる。
もう他の景色なんか見なくていいから彼女だけを見つめていたい、と密かに想った。
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作者名：結花 | 作成日時：2016年3月26日 22時
