第3話 姉弟 ページ7
【神に愛されし子】
その異名を聞いた事の無いものは、恐らく
この黒社会においていないだろう。
ポートマフィア、元幹部&首領秘書のA
という名の若い女性。
美しい容姿に超越した身体能力、そして
特殊な異能力。
彼女は神に選ばれた存在だ。
・・・そう、謳われている。
そして、もう1人その片割れ
【中原中也】
恐らく、Aの弟であったもの。
彼は今やポートマフィア五大幹部の1人として
在籍し、圧倒的な力とその人望。
幹部まで上り詰めた有能な構成員。
しかし、姉であったであろうAは
彼らの性である【中原】を名乗らず唯のAと
名乗っている。
そして、姉弟関係など存在しないかの如く
冷たく、他人のように接する毎日。
又は彼の相棒である太宰を可愛がる、
そんなAに日に日に憎悪が積もる中原中也。
だが、彼は信じていた。
いつか姉は自分を見てくれると。
昔の姉に戻るはずだと、信じていた。
そんな日が永遠に来ない事を恐れずに。
「ねぇ、中也。」
夜の街、一切の星も見えない闇に包まれた時。
誰もいないと思われた所から1人の青年が
姿を見せた。
おどけた口ぶりからは誰かに話しかけたように思われたが返答はない。
彼の独り言であったそれは、街に少し余韻を
残したかのようでもあった。
クスリと笑った青年はもう一度空を見上げ
「
彼女を理解出来るのは私だけさ。
」
13人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:水無月 | 作成日時:2019年9月29日 20時