第5話 違和感 ページ11
中島敦side
「わぁ・・・。今日も凄いですね、太宰さん」
僕、中島敦は胃をキリキリとさせた国木田さんに早速書類に目を通して貰っている最中呟く。
姉弟でキ、キスをしたり、ハグをしたりあんなに顔を近づけたり・・・。
主に太宰さんがAさんにやっているだけなんだけど、Aさんも嫌がったり拒んだりしないんだよなぁ。
「もしかして、兄弟ってそんなものなのかな・・・。」
「そんな訳あるか敦。
お前まで飲み込まれてどうする。」
確認を終えた国木田さんが体ごとこちらに向けてそう言った。
国木田さんは眼鏡をクイッと上げまたため息を吐く。
「恥ずかしげも無くあの様な破廉恥な事を。
AもAだ、何故拒まんのだ。
これでは太宰も調子を乗るだけであろうに。」
「なんだい2人とも?嫉妬かい。」
「「!!」」
バッと後ろを向くと、ニコリと笑ったAさんが立っていた。
紙をひらひらと扇いでいたかと思えば、国木田さんにひらりと紙を投げた。
「先程の書類だよ。」
「あ、嗚呼。確かに受け取った。」
突然現れたAさんに国木田さんは動揺していたのであるのか一呼吸返事に遅れた。
足音も気配も分からずAさんがいつから居たのか。
それすらも察知出来なかった。
あの、国木田さんでさえ。
「コソコソ話は良くないよぉ。
社内では私事の秘密は無し!!でしょ?」
「そんな約束事があったんですか!?」
「ある訳ないだろ!!敦、騙されやすすぎだ!!」
「あはっそれは国木田君も人の事言えないでしょ!ずっと治に騙されてるじゃ〜ん。」
ぷぷぷ、とまるで太宰さんかのように国木田さんを煽るAさん。
こういう所を見ると、あぁ姉弟なんだなぁと
しみじみ思う。
「五月蝿い!太宰姉!!ほんっとうにお前ら姉弟は!!人をからかわなければ過ごせんのか!!」
「まあまあ・・・。落ち着いてください。」
僕は何とか国木田さんを落ち着かせ、Aさんにはデスクに戻ってもらった。
太宰さんよりもAさんの方が案外素直に聞くし、融通も聞くので有難い。
・・・それにしても、何故【あの人】の気配はいつも感じ取れないのだろうか。
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作者名:水無月 | 作成日時:2019年9月29日 20時