序章 2人の異人間 ページ2
『中也』
───姉さん?
『お前だけは守ってやる』
───守る?
『全ての悪夢からお前を』
───待て姉さん何の事だ?
『……例えお前といれなくても』
───姉さん?何を言って…
『幸せになれ』
───なァ姉さん!何処に行く気だ!?
『さようなら、中也』
───姉さん!!
「姉さん!!」
俺が目を覚ますとそこは、いつも通りの俺の部屋だった。
俺の息を荒く、先程まで俺に話しかけていた大嫌いな声はまだ耳に微かに残っている。
「っ……糞っ!なんで今更夢に出てきやがる!!」
俺は前髪を掻きあげた。思えば、之も姉の癖だ。俺は姉に、姉さんに見てもらいたくて色々真似したり見たりしていた。けれど姉さんは……
「…朝から考えるもんじゃねェな。気分がわりぃ。」
そこで止めた。もう今の俺には関係の無いことだ。俺はポートマフィアの中原中也。ポートマフィアの狗。
彼奴はもう、関係の無い存在だ。
─────────
『月が…隠れた。』
武装探偵社の屋根。
そこには闇には不似合いの金髪をした女が
座っていた。
瞳は美しい青。
宝石を表すかのように輝いている。
ボソリと呟いた、その言葉は
何処か悲しそうで、子供のように幼く
拙い声だった。
長い髪が、夜風になびく。
彼女は、隠れた月を掴み引き戻すように
手を出すが、その手は空気を掴み何も残らない
その手を開き、軽く目を伏せた。
『太宰…A。
私は…治の、姉。』
彼女こそ、闇に等しく、天に選ばれた者。
Aだった。
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作者名:水無月 | 作成日時:2019年9月29日 20時