第九話 ページ9
｢俺は、幸せは怖くねえ。なんでか分かるか？
それはな、まだ存在すらしてねぇ未来のことなんか
考えねぇからだ。
なんか不幸になったら、その時考えればいいだろ？｣
俺はAの肩を掴み、言葉を続けた。
｢辛かったよなぁ、A。けどな？これから、“存在している今”で、幸せになりゃあ、そんなの気にならなくなる。.......多分だけどな。
しかも、俺はおめぇをそんな目には合わせねぇ。もしなんかの間違いで、そんなことになったら、俺をぶん殴れ。
《目ぇ覚ませ》ってな｣
俺は気づくとAを抱きしめていた。Aもそれを拒んではいなかった。
自分の身体とは違う、柔らかくて小さな身体。
もっとそれに触れたくて、もっとAを幸せにしてやりたくて、力を込めた。
｢俺は、ぜってぇにお前を幸せにしてやる。絶対にな。
お前の過去なんて記憶喪失なみに忘れさせてやる｣
これじゃ、まるでプロポーズだな。
最後の言葉にAは小さな笑い声をあげた。その声は少し涙でくぐもっていた。
どこからか風鈴の音が“チリン”と鳴った。
その空気の震えは、俺たちに向かってふわりと心地良い幸せを運んだようだ。
｢ ねぇ.......｣
そう、Aに言われ抱きしめる力を少し弱め、目を合わせた。
彼女の瞳は、もう怯えてはいなかった。
彼女の瞳には、しっかりと俺が映っていた。
｢ありがとう。勝己。
＿＿＿もう、今までの私が嘘みたいに、怖くない。
私を、幸せにしてね｣
｢ああ。間違いなく、幸せにしてやる｣
俺たちは、和室で
二人っきりで微笑んだ。
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三香美あっぽー(プロフ) - 満月さん» 読んでいただきどうもありがとうございます。そして、コメントありがとうございます。面白いと言っていただきとても嬉しいです！ (2018年7月27日 10時) (
レス) id: d9359156bb (このIDを非表示/違反報告)
満月 - 今日見つけて読ませて頂きました。とっても面白かったです！ かっちゃん…よく、耐えたね。偉いよ、うん。でも、無事にキス出来て良かった〜！完結、おめでとうございます！ (2018年7月26日 21時) (レス) id: d83bdf162b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三香美あっぽー | 作成日時：2018年7月20日 16時
