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俺は其の幼子を連れて帰った後、傷の手当てした。
数刻前に目の前でつけた傷や、この業障に呑まれそうになっていた原因の妖魔につけられたであろう数日前の傷。
全てに薬をつけ、包帯を巻いた。
此の者の家族はどうしたのだろう。
誰か此の者に夜叉の力の使い方を教えたのだろうか。
ひとりでは答えの出ぬ問を考えては、
目が覚めたら此の者に聞こう、そう結論づけるのだった。
此の者が目を覚ましたのは2日後のことであった。
「……ここは…」
と呟いたきり言葉を続けようとしなかった。
「俺の住んでいる家のようなものだ。
調子はどうだ?業障は落ち着いたか?」
「…はい。私を助けてくれたお方ですか?
ありがとうございました。
これ以上この場にいては貴方様に影響が出てしまいます。
私はもう帰ります。お世話になりました」
と、身体を起こそうとした。
「待て、俺なら大丈夫だ。人間ではないからな。
お前にその力の使い方と身の守り方を教えよう。
まずは身体を癒やせ」
「しかし…」
「お前ひとりでこの先も生きてゆけるのか?」
「それは…」
「では俺のところにいろ。
ところで、名はなんと言う?」
「……無いものと思ってください」
「それでは俺がお前を呼ぶときに困る。
そうだな…。…星片、今日からこの名を使え」
「…はい」
「あとから聞いたところ、星はあの時以前の記憶を持っていないらしい。これが星と出会ったときの話だ」
「なんて辛い話なんだ〜!」
パイモンの泣き叫ぶ声が辺りに響いた。
「ちょ、ちょっとパイモン。静かに」
「だってぇ〜!」
「ははは、まあこの話を聞いたからと言って星をどうしてほしいとかはないからな。
今まで通り接してやってほしい」
「もちろんだぞ!」
「もちろん」
「ていうか、星って500歳だったんだな…」
鍾離と別れを告げたあと、パイモンはぽつりと呟いた。
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てら(プロフ) - ページ1の1行目、タルタリ"ア"ではなくタルタリ"ヤ"です…細かいことですみません🙇♀️ (7月2日 21時) (レス) @page1 id: 372b4e8b3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆっく | 作成日時:2023年3月24日 22時