追憶 ページ35
心地よい陽が差す昼過ぎ頃、重雲は行秋の家の書庫に来ていた。
「行秋の家の書庫は、いつ見ても大きいな」
「ここが行秋の家の書庫なのか…」
見上げながら感嘆の声を漏らしたのは半日休みの星。
「重雲は妖魔に関わることだろう?いつものところにあるよ。星は家系図だっけ?一応ここらへんにまとめておいたけど…」
「いつもありがとな」
「うん、ありがとう」
それぞれ読むものの付近に散らばる。
今日星が行秋の書庫に来たのは自分の家系を知るためだった。
旅人と缶詰知識なるものを見て昔のことを思い出してから、自分が居なくなったあとあの家がどうなったのか気になったからだ。
「今はもうないのは知っているが…」
もしかしたら、重雲に陽の気を抑えるためのアドバイスができるかもしれない。
星の方法は長い間生きたことによる感覚でしかなかった。
何冊か開いたあと、ようやく星は自分の家の家系図を見つけた。
結局、あの家は星が捨てられた代で潰えたらしい。
あの時代の中、子供を授かることでさえ稀有だったのに唯一の子供を蔑ろにしたおかげだろう。
捨てられたせいか、星の名前のあるべき場所には黒いシミしかなかった。
あとから塗りつぶされたようだ。
「行秋、この家系のことを詳しく知りたいんだけど…」
星と重雲の間で武侠小説を読んでいた行秋に声をかける。
「うん?…純陽の体を有する一族?」
「そんな家があったのか?!」
「この前たまたま耳にしたんだ」
重雲が身を乗り出して聞いた。
「この家名だと…これぐらいしかないかな」
棚を見上げると確か数冊にあった。
中を見ると現在璃月で使われている文字ではない、星が産まれたあの時代では常用文字だったもので書かれていた。
「星はこれ読めるのか?」
「まあ…一応」
言葉を濁してすらすらと読んでいく。
当然だが星のことは書かれていない。
当時のことは事細かに書いてあるのに雷を扱う夜叉のことも書かれていなかった。
「陽気については何か分かったか?」
「う〜ん…。門外不出のものなのかもしれないね。何もかいてないや」
「そうか…」
重雲は落胆して元の本の場所に戻った。
星もそのまま読み進める。
星にとってあの頃に懐かしむ思い出は存在しない。
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てら(プロフ) - ページ1の1行目、タルタリ"ア"ではなくタルタリ"ヤ"です…細かいことですみません🙇♀️ (7月2日 21時) (レス) @page1 id: 372b4e8b3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆっく | 作成日時:2023年3月24日 22時