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記憶のあと ページ29

スラサタンナ聖処はいつになく静かだった。

聞こえるのは星の荒い呼吸のみだった。

いつも気丈に立っている彼…否、彼女は片膝をつき、槍に縋っていた。

頭を抑え苦しそうに息を吐いていた。

「星、大丈夫か?陽気に当てられたか?」

パイモンが声をかけながら近づく。

旅人もそれに続いた。

その時、星から獣の唸り声のようなものが聞こえた気がした。

「パイモン、下がって…っ!」

肩を押され、背中を強かに打ちつける。

思わず瞑った目を開けると喉元に紫に装飾された、見覚えのある槍が見えた。

「旅人!」

パイモンの叫び声が響き渡った。

今なお旅人の肩を抑え、槍を喉に突き刺そうとする星の顔はとても苦しそうだった。

「たび、びと…、にげ…」

陽気が暴れているのではなく、きっと夜叉の力が暴れている。

陽気の諫め方なら重雲に教わっていて知っているが、夜叉の力のことなんて何も知らない。

旅人には為す術がなかった。

魈と鍾離を思い出す。

彼らから、何か聞いただろうか。

再び星から苦しそうな唸り声を聞いた。

「…ぐっ!」

その瞬間星が倒れ込んだ。

強く握っていた槍は手から離れ2、3m先に飛んでいった。

「…助かったよ、ありがとう」

星の身体をゆっくり退かしながら旅人は起き上がった。

開けた視界の先には放浪者の姿があった。

「でもコイツどうするんだ!?」

放浪者に気を失わされても呼吸が整うことはなく、唸り声が聞こえる。

「私、1回璃月に帰って鍾離先生に聞いてくる!」

そう告げると旅人はワープしたのか居なくなってしまった。

「ちょ、旅人!?」
「あら、行ってしまったわね」
















「魈、いる!?」

璃月の適当なところにワープしてすぐに叫ぶ。

「叫ばずとも聞こえるが、何かあったか」

「星が夜叉の力…?かなにかに侵されてて、どうすればいいのか分からなくて!魈と鍾離先生なら知ってると思って、それで、鍾離先生はどこにいるか分からないし、だから…」

語順も文法もばらばら、語彙の欠片もないが、魈には伝わったようだった。

「ならば…」
「旅人、呼んだか?」

「て、帝君!?」
「鍾離先生!?」

奇跡的なタイミングで散歩をしていた鍾離が声をかけた。

もしくはわかっていたのかもしれないが。

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てら(プロフ) - ページ1の1行目、タルタリ"ア"ではなくタルタリ"ヤ"です…細かいことですみません🙇‍♀️ (7月2日 21時) (レス) @page1 id: 372b4e8b3a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆっく | 作成日時:2023年3月24日 22時

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