とある稲妻人との話 ページ14
夕焼けと夜の境目。
璃月へと船から降りていた万葉は、雨はまだ降っていないが雨の音がするなか、夕日を見るために璃月港と望舒旅館の間に位置する丘にいた。
その帰り。
日が沈み、辺りが暗くなった途端雨が降ってきてしまった。
雨で周りの音が聞きづらくなっていた万葉は近づいてくるヒルチャールの音に気づくことができなかった。
肩と腕を矢で貫かれた後、もう一体から棍棒で横っ腹を強く殴られる。
もともと燃えていたであろう棍棒は雨で鎮火され、
いやに焦げ臭い匂いがした。
「ぐっ…」
そのまま吹き飛ばされすぐ後ろの木にぶつかる。
目の焦点が合わなくなり立てなくなる。
顔を上げることのできない視界の隅に、頭へと振り下ろされる棍棒が見えた。
バチっと音がする。
棍棒を振り下ろされた感覚がしない。
ようやく動くようになった体を動かし顔をあげると、
黒い髪を持つ少年が槍でヒルチャールを斬る姿が見えた。
「生きているか?」
その少年はヒルチャールをいとも簡単に屠ると、万葉に近づいた。
「助かったでござる…」
少年はそう答えた万葉をじっと見つめた。
「その体ではひとりで帰ることはできないだろう」
少年に抱きかかえられると、一瞬で温かい光に包まれた。
「オーナー。こいつの治療を頼む。
何か入り用があれば遠慮なく言え」
ゴレットの指示された場所に万葉を丁寧に座らせるとバチっと音を立ててまた一瞬で姿が見えなくなってしまった。
治療を受け、そのまま望舒旅館で一夜を明かした万葉は、
北斗率いる璃月南十字船隊へ直行したが、とても心配されたことは言わずもがなだろう。
後日、お礼を言いたいと望舒旅館に向かい、ゴレットに少年のことを聞いたが会うことは叶わなかった。
璃月港ですれ違った星には気づかなかったようだ。
夜叉の力を纏う星は、普段の星と雰囲気どころか発する音もまた違うのだった。
(あの、隠されたような深く痛い音はどこであろうか)
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てら(プロフ) - ページ1の1行目、タルタリ"ア"ではなくタルタリ"ヤ"です…細かいことですみません🙇♀️ (7月2日 21時) (レス) @page1 id: 372b4e8b3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆっく | 作成日時:2023年3月24日 22時