僕の天使 -七色の空-

募る想い ページ10

女神様は天使を呼び戻しました。


私は…

人間の心を学びなさいと言ったはずです…


女神様は天使に言いました。

天使は女神様に言いました。


心優しい王子様を…

お傍で幸せにしたいんです…


女神様は優しい顔を曇らせます。


もし…

人間に心を奪われるような事があれば…

天使の羽根を失ってしまいます…

そうなれば…

二度と天界には戻れなくなって…

あなたは…

死んでしまうのですよ…


天使は胸の前で合わせた手をギュッと握り合わせました。

天使は悩みました。

毎日、胸を痛めました。


王子様に会いたい…


その想いだけがどんどん大きくなりました。

そして天使は、女神様に黙って、再び人間界へ降りたのです。


テレビ局の廊下。

幾つも控室が並んでいた。


YS「早く取ってこいよ…。」

一階上のスタジオに移動してから小道具のサングラスを忘れて来た事に気づいたドンヘ。

DH「悪い…少し待ってて。」

慌ててスタジオを出ると、一気に階段を駆け降りる。

控室への廊下に飛び込んだ時、思い切り人にぶつかった。


ドンッ！！


鈍い音がすると、ドスン！と言う音もした。

思い切りぶつかりすぎてドンヘも少しよろける。


DH「ごめんなさいっ！大丈夫でしたかっ！？」

慌てて床に尻もちをついている相手に手を伸ばす。

DH「…キミは…。」


お尻を撫でながらゆっくり顔をあげた相手。


交差点で…

優しい微笑みをくれた人…


あの時と同じ、真っ白いワンピースで背中まで伸びた長い髪が揺れていた。

DH「ごめんね…。大丈夫だった…？」

差しだされている手を見て少しためらう。


王子様の手…


そっと伸ばした細い腕。

ドンヘはその手をしっかりと握った。


あったかい…


DH「お尻打ったろ…？他にもどっか打ったかな…俺急いでて…思い切りぶつかっちゃったから…。」


困った顔で心配そうに見つめる視線。

ドンヘの顔をジッと見つめている真っ白なワンピースの女性。


DH「キミ…この間俺と交差点ですれ違ったよね…？」


あの一瞬を…

覚えて…


一瞬の出来事。

けれど、ドンヘの中では随分長い時間の出来事だった。


DH「名前は…？」


王子様が…

私に話しかけてる…


DH「名前…教えてくれない…？」

再び聞かれる名前。

ジッと見つめていた視線が少しだけ俯くと小さな小さな声で


「…A……。」


と答えた。


それは女神様に貰った名前でした。

天使は、願い通り王子様に会う事が出来たのです。

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