僕の天使 -七色の空-

身を焼き尽くす熱 ページ47

アイスノンを頭の下に突っ込んで、氷で冷やしたタオルを額に乗せる。


DH「雨に打たれたって言ってたし…凄い熱だな…。」

ドンヘはAの頬をそっと撫でた。


背中の大きな羽根…

Aよりずっと重たい俺を…

細い腕で抱きしめて離さなかった…


直接見た事なのに、信じられない程非現実的。

ベッドで辛そうにしているAは、ただの女性。


Aがホントに天使なら…

保育園での事も…

ユイの熱の時も…

ヒョクが言ってた事故の時も…


全部…

キミが…？


どう繋げると納得出来るのか分からなくてドンヘは軽く頭を振る。

ズボンのポケットで携帯が震えた。


立ちあがるドンヘはリビングへ戻る。

着信表示はサキ。


DH「サキか…。」

ｻｷ「突然出てっちゃうから…Aさん…見つかった…？」

DH「ごめん…。見つかったけど…。」

ｻｷ「けど…？」

DH「凄い熱で…。」

ｻｷ「随分ぬれてたから…それでかもしれないわね…。そっち行こうか…？」

DH「今夜はいいよ。明日来てやって…。」

ｻｷ「分かった…。ユイを預けたら行くわね…。」

DH「ありがとう…。」


窓際で広がる景色を見ながら、ドンヘは携帯を握りしめる。


DH「サキ…。」

ｻｷ「ん？」

DH「お前…ユイの話を信じるか…？」

ｻｷ「え？」


ドンヘの声に明るさが無くて、サキは顔をしかめる。


ｻｷ「Aさんが天使だって言う話…？」

DH「あぁ…。」

ｻｷ「どう…かしらね…。現実的に考えれば…ありえないと思うけど…。」


ドンヘは小さなため息をつく。


DH「だよな…。」

ｻｷ「どうして…？」


マンションの屋上から落ちた俺を…

大きな羽根を広げて助けた…

なんて事…

話せるはずもない…


DH「いや…なんとなく。」

ｻｷ「ドンヘ…前に聞いたわよね…。」

DH「ん？」

ｻｷ「あの絵本の結末…。天使はどうなるのかって…。」

DH「あぁ…そんな事聞いたな…。」


サキはソファに腰を落とす。


ｻｷ「あの絵本の中の天使はね…。」


王子様の前で羽根を見せてしまった天使。

人間の為に力を使ってしまっただけでなく、その存在をも知られてしまいました。


身体は燃えるように熱く、その熱は天使の力が消えるまで続くと言われていました。


天使は苦しみ続けます。


王子様…


うなされるように、天使は何度も王子様の名前を呼びました。


もう目覚めなくていい…

苦しまなくていいように…

跡形も残らずこの身ごと…

全て…

灰に…

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