絵本の中 ページ19
息を乱して帰って来たマンション。
部屋の前で軽く息を整える。
ゆっくり静かに開けた玄関の扉の向こうは、明かりもついていない真っ暗な部屋だった。
DH「あれ…出かけてるのか…？」
真っ暗な中壁に手をついて部屋に上がり込む。
リビングへの扉を開けた途端、心地よい風が吹き抜けるように流れた。
綺麗な月明かり。
開きっぱなしのベランダの扉。
カーテンが揺れていた。
ドンヘの顔が一気に驚きに変わる。
まるで…
絵本の中の世界だった…
ベランダの手すりに座って足を揺らしている人影。
その背中には大きな白い羽根。
風と話をするように、長い髪を揺らされて、月明かりをスポットライトのように浴びていた。
“てんしさまっているとおもう？”
無意識にユイの声が頭に湧きあがる。
天使…？
引き寄せられるように勝手に前に足が進んで行く。
ヴェールのように揺れるカーテンに手をかけると、手すりに座っていた人影がハッとして振り返る。
月明かりが逆光になってその顔まで見えない。
少しも視線を外せないまま、カーテンを挟んでジッと見つめる窓の外。
突然手すりに座っていた人影が視界から消えた。
ハッとしてカーテンを跳ね上げると、靴下のままベランダに出る。
少し身を乗り出して下を覗きこんだが、人が落ちた様子は無かった。
今のは…
なんだったんだ…
乗り出していた身体を元に戻すと、頭上からヒラヒラと舞い落ちてくる白い物を掌で受ける。
DH「…羽根…？」
真っ白い羽根。
月明かりに照らされて綺麗に輝いていた。
もう片方の手で羽根を掴もうとした瞬間、それを風がさらっていく。
DH「あっ…。」
高く高く、空のもっと上まで連れて行くように舞いあがって行く羽根を見上げる。
天使なんて…
いる訳が…
目の前で今起こったばかりの不思議な出来事。
何もない掌をジッと見つめて困惑するような顔でキュッと握りしめた。
「…お帰りなさい…。」
部屋の中からかけられた小さな声。
肩を少し反応させて振り返るドンヘ。
真っ白いワンピースで長い髪を部屋に入り込む風に揺らされているA。
DH「ただいま…。」
笑顔を作って部屋の中に入ろうとするドンヘは空を見上げる。
「どう…したんですか…？」
DH「えっ…いや…なんでもないよ。寝てたのに起しちゃった？」
首を横に振るA。
ドンヘはベランダの扉を閉めると、Aの小さな頭を撫でた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 122人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆちょみん(プロフ) - 慧さん» ご無沙汰していました！遊びに来て頂いてありがとうございます！ご期待に添えるかどうか分かりませんが、楽しんでもらえたら嬉しいです^^ (2013年6月1日 0時) (
レス) id: dc9a7e9a2f (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - 新作おめでとうございます。今回も楽しませて頂きます！ (2013年5月31日 22時) (レス) id: 35097dfc61 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちょみん(プロフ) - ミーキーさん» ありがとうございます！たくさん涙腺緩んでください！更新頑張ります！ (2013年5月30日 22時) (レス) id: dc9a7e9a2f (このIDを非表示/違反報告)
ミーキー(プロフ) - もう、本当に泣きそうです。続きがすごく気になります^^更新頑張って下さい♪ (2013年5月30日 22時) (携帯から) (レス) id: 3a63ee8a7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆちょみん(プロフ) - はなさん» ありがとうございます！お読み頂いてホントに嬉しいです^^ もう少し続きますので、どうぞ最後までお付き合いください♪ (2013年5月30日 22時) (レス) id: dc9a7e9a2f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆちょみん
| 作者ホームページ：http://ameblo.jp/yuchuming/
作成日時：2013年5月27日 19時
