*･ﾟ*･ﾟアイドル好きで何が悪い*･ﾟ*･ﾟ

彼女の名前 ページ39

……酔ってはいるけど、聞き間違いではないと思う。


寂しいって……。

私はカフェで働いたことがないから良く分からないけれど。

嫌がらせのように毎日来ていた客がピタッと来なくなると、寂しい……と感じるものなんだろうか。

もしくは、常連客を引き戻すための話術なのか。

それとも……。


｢……はは。やだなぁ、チャンミンくん！そんな言い方したら、勘違いされちゃいますよ〜？｣

｢……え？｣


彼の視線を感じながら、目の前のカクテルを流し込む。


別に期待なんてしていない。
……していないつもりなのに、いちいちチャンミンくんがカッコいいから、都合のいいように勘違いしたくなる。

だから、ヤケクソというか現実を見るためと言うか





｢そう言えば、アンナちゃんは元気ですか？｣





わざと、彼女の名前を出した。






｢アンナですか？まぁ、いつもと変わらず元気ですよ｣

｢可愛いですよね〜、アンナちゃん｣

｢Aさんは、アンナと仲がいいですよね。アンナもAさんに会いたがっていましたよ｣

｢そ、そうですかぁ……｣


……いやいや。自分から話を振っておいて落ち込むってどんな技よ。


｢……何やってるんだか｣


自分では、すっかり立ち直ったと思っていたけれど
まだ、早かったみたいだ。



恋人なんだから当たり前なのに、チャンミンくんがアンナって呼び捨てにするだけで、完治していなかった傷がシクシク痛む。



｢……Aさん、本当に大丈夫ですか？｣


｢あれ？ちょっと、A大丈夫？｣


やっと私の存在を思い出したアカリが、私の顔を覗き込んだ。


その瞬間、気付いて貰えてホッしたのか、私の我慢が限界だったのか、目頭が熱くなって来て慌ててテーブルに顔を伏せた。

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