mojito++ 3

オレンジ 4 ページ18

エレベーターの前でドアが閉まって、しばらくぼーっとしていた。


どれくらいその時間が経過していたのかわからないんだけど、はっきりとしている感情はある。


”嫌だな”

って。



その男がAちゃんとどういう関係なのか俺は全く知らないんだけど、男女が同じ部屋に入るんだ。

俺だってAちゃんとキスしてしまったし...

それは俺がそうしたかっただけかもしれないけど。


でも、俺じゃなくったって男ならそうなるだろう？



下手したらその先だって...



けど、俺にはあのドアのインターホンを押して中に入る権利もない。


だって俺はただの隣人だし。





ちょっと前ならできた？
いや、できないか。
さすがにそこまで俺は非常識じゃない。


前は単純にAちゃんの事何とも思ってなかったから。


日用品が入った袋が重く感じてようやく自分の部屋に向かって歩き始めた。

ひとつふたつと横を過ぎるドア、けど、512号室の前の瞬間だけ変に気になってしまう。

中で何が起きてるんだろうって、らしくもない事気にして自分の部屋の鍵穴に鍵を入れた。




部屋に入ると少し薄暗い部屋に急に襲う寂しい気持ち。

隣は二人でいるのに...


そのあと一気に襲うこの間の出来事に対する後悔。

Aちゃんをたぶん傷つけたこと。

中途半端にそばに置いて、自分のいいように言って。

本当はそうじゃないくせに。




スマホを取り出して、メッセージアプリを出した。

送る相手は...




”Aちゃん”


アイコンは何でもないデフォルトのやつに設定されている。



”今度、食事しに行かない？”



ソツなくそういう事を送る。

別に送る内容は何でもよかったんだ。

隣で起きていることに対する僅かな抵抗。



返事が返ってくれば、そういった状況ではないって思える。


返ってこなかったら...


多分、そういう事...

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