mojito++ 3

横断歩道 5 ページ29

『まぁ、そうだね...とりあえず、頑張る...』



そうつぶやく隣人に対して、私も今日足重に会社に行くわけだけど、がんばろって心の中で唱えた。





マンションの近くにある横断歩道。

隣人と初めて出くわしたコインランドリーのちょっと先。

横断歩道を渡ればコンビニがある。



ブーーッ

ブーーッ



隣人のスマホがポケットで揺れる音がする。



「電話...ですか？」


『あ...』


ポケットから取り出して画面を見ると、少しこわばった表情になる隣人。



『ごめんAちゃん、俺やっぱ部屋に戻るね』


「あ、いえ、大丈夫です...」


『また、連絡するから』


「はい...」


信号が青に変わって隣人はそれと同時にすぐに背を向けて電話に出ながらマンションに向かって歩いた。


誰だったんだろう。

会社の人かな。

それとも、ジュヨンさん？




ううん、ジウォンさんかもしれない。





少し気がかりになりつつも、私は私で今日はひと踏ん張りな日。


コンビニに入ってすぐ、エナジードリンク買って一気に飲んだ。



「私の方が大人なんだから、ちゃんとしなきゃ...」



ジュホン君にあんな事してしまった事も、ジュホン君の気持ちに対して失礼な事をしたことも。

ちゃんと謝りたい。

もし、そうじゃなかったら、私は自分にしてきた男たちと同じようなモンだなって思ってる。


思わせぶりして、何もはっきりさせなくてうやむやにしちゃうやつ。


そんな事されてモヤモヤするのは私だけで十分だ。



電車に乗ってつり革を掴んでいつものように通勤するけど、今日は少しだけ気分が違う。

しっかりしよう、って自分に言い聞かせながらくるっと周囲を見渡した瞬間だった。



”女優スヒョン、モデルウヌと再婚”



「...え」



電車についている週刊誌の広告。

大きく書かれた記事。

スヒョンさん...つまりジウォンさんは新しい恋人と再婚する、ということだ。



だから、隣人は戻ったのかな...


カバンの中に入ってるスマホをごそごそと取り出して、メッセージアプリを開いた。




衝動的に”大丈夫ですか？”なんて入れた文字は一瞬にして消した。



大丈夫じゃなかったら、多分何か言ってきそうな気がする。

私が踏み入ったところで、どうこうできる事でもない、そう思ってスマホをバックにしまった。




シウ君にジウォンさんは何て説明するんだろう。


モデルのウヌって今一番売れッ子だし。


売れッ子同士の結婚、そりゃ週刊誌も騒がしくなるよね。

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