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第10話 ページ10

第10話


七海「冷えますね」



A「そうですね…」



七海「…よかったら、これを」



そう言われた直後
首元がふわりと暖かくなる

七海さんが自分の巻いていたマフラーを
私に巻いてくれたのだ


七海さんの、優しい匂いがする

たった1枚のマフラーとは思えないほど
暖かくなる



A「ありがとうございます…暖かいです」



七海「…ここの階段に腰掛けて、少し話しませんか」



七海さんは持っていたハンカチを階段に引いて
私を手招いた

お礼を言いつつそこに腰掛けると
七海さんは少し間を空けて私の隣に座る



A「すごい、綺麗な夕日」



思わず声に出てしまうほど
目の前に広がる海と夕日は美しかった



七海「これを貴方に見せたくて」



A「え?」



七海「この時間のこの場所、最も夕日が綺麗に見えるんですよ
あくまでも私調べですが」



そう言って夕日の中で
優しく微笑みかけてくれる七海さんが

綺麗で、美しくて、

そんな人の横にいるには
今の私では
あまりにも薄汚れているように感じて


自分でも知らない内に涙が一筋
頬を伝った



七海「Aさん…!」



A「すみません…
夕日が…海が…あまりにも綺麗で…

自分の醜さを…痛感してしまって…」


言葉と共に流れた涙は
七海さんの長い指が静かに拭ってくれた



七海「…貴方が貴方のことをどうお考えかは
私には分かりませんし

他の人が貴方をどう思っているのか、私は知り得ません」



A「…?」



七海「ですが私にとって貴方は

この海よりも

夕日よりも

他のどんな美しいものよりも綺麗な人です」



A「!」



七海「…私達はまだ知り合って間もないですから

私の知らないAさんもいるでしょうし、
Aさんの知らない私もいる

だからこそこれからゆっくり
焦ることなく時間をかけて
お互いを知り合いたいと、思っています」




言葉の1つ1つが曇りなく
全て信じていいものだと思える

…そういう言葉をくれる人が
いかに貴重で尊い存在か

私はたぶん、誰よりも知っている



A「私も…同じ気持ちです」


私の言葉に
七海さんはふっと小さく微笑んだ



七海「…手。重ねても、良いですか?」



そう言った直後
私が返事をする間もなく
私の手に七海さんの大きな手が重なった


言葉はなくて、聞こえるのは波の音だけ

だけど触れ合った手が暖かくて
さっきまでの誰彼構わぬ人恋しさが

別の感情へと形を変えていくのが分かった

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設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 七海建人   
作品ジャンル:恋愛
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葉月 - 五条さんの作品の中で一番好きです、、。最初五条の印象あまり良くなかったのに五条サイドになった瞬間切なすぎて素晴らしすぎました。思わず涙です。いろんな作品で色んな五条さんありますがこの物語の五条さんの性格好きすぎます。素敵な作品を有難う御座います! (2022年4月11日 0時) (レス) @page30 id: 8ba78d6b9a (このIDを非表示/違反報告)
とみこ(プロフ) - 紅葉さん» 最後まで読んでくださりありがとうございます( ; ; )コメントもとても嬉しいです( ; ; ) (2021年6月15日 17時) (レス) id: 8851a66c99 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 最終話が七海さん目線なの泣いちゃう(´;Д;`) 完結おめでとうございます! (2021年6月14日 22時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
とみこ(プロフ) - hachiさん» いつも読んでくださりありがとうございます!そしてご指摘頂きありがとうございます( ; ; )ずっと暇だと思っていた上、間違った意味で覚えていました…めちゃくちゃお恥ずかしい…泣 大変助かります!本当ありがとうございます(´;ω;`) (2021年6月14日 15時) (レス) id: 8851a66c99 (このIDを非表示/違反報告)
hachi(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています!第27話なんですが「とりつく島もない」の入力ミスでは?また、謝罪や頼みを聞き入れず冷たくあしらわれることを言うので、誤用かと思います。指摘不要でしたらすみません(><;)創作頑張ってください! (2021年6月14日 11時) (レス) id: 96eaeb6d2d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とみこ | 作成日時:2021年1月22日 0時

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