曖昧な関係だと思っていたのは私だけでした【五条悟】【七海建人】

第5話 ページ5

第5話



七海「こんな時間になっていたなんて驚きましたね」



店員さんに声をかけられたあと、
会計をさらりと済ませてくれた七海さんは
そのまま車で私を送ってくれた

助手席に座らせて貰って
運転するその横顔を見つめると

…静かに胸が高鳴った



A「そうですね。
とても楽しかったです。ご馳走様でした」



七海「いえ。私もとても楽しかった。
貴方とは不思議な縁を感じます」



A「そうですね…。
ご縁がなければここまで色々起きないかと」



七海「ええ。
…こちらのマンションですか？」



A「あ、はい。止めやすい所で…」



七海さんは私のマンションの前で車を停めてくれた

私が車を降りると
窓が開いたので挨拶をする



A「すみません、色々とありがとうございます」



七海「…」



A「…七海さん？」



七海「…連絡先を…。
差し支えなければ教えていただけますか」



少しだけ、耳を赤くして
目を逸らしてそう言う七海さん

その様子に私まで恥ずかしくなるけれど

断る理由なんて無かった



A「はい…もちろん」



.
.
.



連絡先を交換した後、
「また」と言って七海さんは帰って行った


…不思議な時間だった


今日初めて話したはずの人なのに
まるでずっと昔から知り合いだったみたいに
スムーズに会話が進んで

うん…すごく楽しい時間だった

でも

七海さんといる時の私は
私も知らない私だったな…

誠実な七海さんの雰囲気につられるというか

いつになく言葉遣いまで
綺麗に喋れていた気がする


七海さんといたら…

私も、真っ当な恋愛ができるんじゃないか


そもそも
始まりがお酒だった悟と

初めから喫茶店に誘ってくれた七海さんとでは

何もかもが違う


マンションまで送ってくれたけれど
私の部屋に上がり込んでどうこうしようとか
そんな気はさらさら感じられなかった


普通の女性が正当に求めるモノを

七海さんなら…
満たしてくれるんじゃないか



そこまで考えて私はぶるぶると首を横にふる

今日話したばかりの人と
何を妄想しているんだか。


それに私には…


ため息をつきながらマンションに入り

部屋の扉を開けると



A「へ？」



玄関に
明らかに自分のものではないけれど
見覚えしかない男物の靴があって
私は固まる



五条「おかえり、A。遅かったね」



A「…夢？」



五条「？？」




次またいつ会えるのかと思っていた彼が
ひらひらと手を振って私を迎えた

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