曖昧な関係だと思っていたのは私だけでした【五条悟】【七海建人】

第14話 ページ14

第14話


映画を観終えて
七海さんが予約してくれたお店で食事をした

七海さんは
「今日は車で来ていないので」とワインを1杯頼んだので
私も同じものを頼む



A「一緒にお酒を飲むの初めてですよね」



七海「そうですね」



A「お酒、お好きですか？」



七海「ええ。人並みに飲みますよ」



A「私も同じ感じです。
やっぱりこういう所はとことん同じですね」



七海「本当に不思議ですね。

…まあ今日は、どうしても1杯飲んでおきたかったので頼んだのですが」



A「え？」



七海「いえ。
サラダ、取り分けますね」



A「あっ…ありがとうございます」



小さく呟かれた言葉が聞き取れなくて
聞き返しても教えては貰えなかった


.
.
.


レストランを出て
目的もなく夜風に吹かれながら歩く



A「すみません、いつもご馳走になってしまって…」



七海「いえ、当然のことです
そんなに恐縮なさらずに」



A「ありがとうございます…」



七海「…それより。
この夜景を…見て頂きたい」



指差された方を見ると
見事な夜景が広がっていた

レインボーブリッジも
自由の女神像も見えて

自然と「わぁ」と感嘆の声が漏れる


目的もなく歩いていたと思っていたけれど、
七海さんはこの場所に連れてきてくれていたんだ



七海「素敵な景色でしょう」



A「はい…！とても…」



嬉しくなって思わず七海さんを見上げたら
自然と目が合って

七海さんは、優しく目を細めて微笑んだ



七海「一緒に海と夕日を見た時に
Aさんがとても嬉しそうにして下さったので、

もう一度あの笑顔が見たいと思い
ここにお連れしました

喜んで下さって、私も嬉しいです」



七海さんの誠実な言葉に、胸が痛くなった


泣き出してしまいそうなほど嬉しいのに

どうしてか
なんて返したらいいか分からなくて

声が出せない


そんな私の身体を
七海さんはふわりと抱き締めた

すっぽり彼の腕に収まると
彼の優しい匂いが目一杯広がって

…どうして泣きたくなるんだろう



七海「好きです。

不思議な出逢いでしたが
それは運命だったと…

私らしくないことを
すんなり受け入れてしまうくらいに。

貴方の笑顔を
どうしたら1秒でも長く見れるかと
本気で悩んだり、
そんな初めての感情に戸惑うくらいに…

Aさんのことが好きです、とても」



七海さんの真っ直ぐな想いが
すとん、と胸に落ちて

堪えていた涙が静かに溢れた

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