曖昧な関係だと思っていたのは私だけでした【五条悟】【七海建人】

第12話 ページ12

第12話


A「悟…」



五条「久しぶり」



悟が現れるタイミングは、常に最悪だ


もう少し時間が経てば
忘れられたかもしれないような

いつだって1番会いたい時に

不意に現れる



五条「…雰囲気変わったね
髪染めた？服装も大人っぽくなった」



A「…うん。悟は変わらないね」



私は彼の右手に
変わらずはめられたままの指輪を見て言った



五条「そお？ちょっと痩せたんだけどなー。

ね、Aご飯食べてきた？」



A「まだだけど…」



五条「お、よかった！俺作ってみたんだ〜」



A「え？」


ほら見て見て、と言う悟に腕を引っ張られ
台所に行くと

確かに、ハンバーグやサラダなんかが用意されていて。



A「これ…悟が…？」



五条「Aの為に僕頑張ったんだよ〜
結構上手くできたでしょ？」



A「…ばか」



五条「へ？」



A「嬉しすぎる、こんなの…ばか悟…」



五条「…本当可愛いなぁ」



ぎゅっと抱き締められる私の身体

途端、私の胸に安心感が広がって


今この時間が幸せだと
全身が脳に訴えかけてくる


悟の体温に包まれただけで
どうしてこんなに幸せになるの？

"悟が私の為に"してくれたことが
どうしてこれ程までに嬉しいの？


他で感じる充実感と、何がこんなに違うの？


なんでそれに、今気付かせるの…


幸せで、嬉しくて、

やっぱりそれが虚しくて

抱き締め返す腕には力が上手く入らなかった



.
.
.



ご飯を食べ終えて
お風呂に入り、寝室へと向かう

先にお風呂に入った悟は
既に私のベッドでごろごろしていた



五条「おいで」



手招きされるがままベッドに潜り込むと
自然としてくれる腕枕

素直にそこに収まった



A「ご飯ありがとう。美味しかった」



五条「いーえ！また作ってあげるね」



A「うん、」



五条「じゃあおやすみ、A」



A「え…？」


いつもなら勝手に服に入り込んでくる悟の手が
優しく頭を撫でてそう言うから
私は驚いて聞き返してしまった


五条「……今日はさ。
こうして抱き合って…眠りたいんだ」



A「…なんで？」



私の質問に
悟は私にキスをして微笑むだけで
明確な答えはなかった

悟が家に泊まりにきて
何もしないで眠るのなんて初めてだ


でもどうしてだろう


いつもと違ってお互い服を着たままでいるのに

いつもよりうんと、近くに悟を感じる


ぽんぽんと優しい手で背中を叩かれて
私は穏やかな眠りについた

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