曖昧な関係だと思っていたのは私だけでした【五条悟】【七海建人】

第1話 ページ1

第1話

悟とこうなったのは、お酒の勢いだった


彼とは
同じ大学で同じサークルの先輩として出会った

彼が3年生の時に私は新入生としてそのサークルに入り、

何故だか可愛がって貰えるようになり、

…あっという間に好きになっていた


というか、そのサークルに所属していた女の子は…
いや、彼を知る女の子は
みんな悟のことが好きだったんじゃないかと思う

それもそうだ

日本人離れした完璧なルックスなのに
へらへらしていて親しみやすい(?)性格

それでいて
授業は単位ギリギリしか出席しないくせに
成績はいつもトップという天才っぷり


男として…
もはや"人"として最強だったから


だけど当の本人は
「僕あんまりそういう欲ないんだよねー」
とか言って彼女を作らない

女遊びをしている様子も、特に見られなかった

最後に恋人がいたのは
私がサークルに入るよりも前のことだと
風の噂で聞いたくらいだ



そんな彼と私は

彼が大学を卒業してから、2人で飲みに行くようになった


突然「今から飲まない？」と
彼に誘われた日

私はなんと元々あった予定をドタキャンして
彼の元に駆け付けた


馬鹿みたいだけど、それが功を奏し


それから何回か2人で飲みに行って
飲み友達になって
4年間それ以上にもそれ以下にもならない関係が続いて


ちょうど一年ほど前、一線を超えた



その日は間違いなく飲みすぎていた

…しかも私だけ。

仕事でミスをして
愚痴を聞いてもらいながらヤケ酒して

いつもサワーなのにワインなんか飲んで。


でもちゃんと記憶はある


ずっと、ずーーーーっと憧れていたその人の

甘い香りが鼻をかすめた瞬間も

私で乱れる姿を愛しく思ったことも


忘れるはずない
お酒になんか流せる筈がなかった


…だけどそれは私だけ


それから1年が経ったけれど
私達の関係は明確な言葉のないまま
身体だけを重ねて

それ以上になることはなかった


LINEなんて2日に1回返って来れば早い方

会うのは決まって夜だし、
いきなり悟が家に来るのとがほとんど

だけど…

"五条悟"の文字を携帯が通知する度に
彼が気ままにこの部屋に来る度に

何度だって新鮮に嬉しく思うのだ



それがもう、今は、辛い

好きだと思うことが辛い

あの時誘いに応じたことは
功を奏してなんかない

やっぱりただの馬鹿らしいものだったと
そう思い始めていた頃

私は、とあるパン屋で思わぬ出会いをした

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