【弱虫ペダル】箱根の山をどこまでも (ページ2)

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シャーっと何人もの部員が近づいてくる音がする。
その音の正体はロードレーサーが近づいてくる音。
その音に七海は僅かに口元を緩めた。

先頭が校門を通過すると同時に彼女の指が動く。
ピ、という何度も聞いた機械音の後、手元にはタイムが表示される。

｢どうだった、マネージャー｣
主将がベンチに置いてある白いタオルに手を伸ばしながら、タイムを尋ねる。

｢前回より2.5秒縮まりました｣
シャープペンシルを走らせながら少し満足そうに七海は答えた。

あー疲れた、と部員が口々に呟きながら同じく白いタオルに手を伸ばす。
きちんと角が揃った状態で積み上がったタオルは七海1人が用意したものだ。
その隣には学年ごとに並べられたボトル。
名前が記入してあり部員一人一人にボトルが存在する。

｢流石だな、川谷。濃さが丁度いい｣
主将はよく彼女を褒める。
彼女が仕事をしっかりこなすからだ。
今年1年として入ってきた七海は重要な箱根学園自転車競技のたった一人のマネージャー。
何人も希望者がいるものの、部員目当てであったりしてなかなか彼女の様に有能なマネージャーを確保出来ていなかった彼らにとって、部員の仕事が減ったという点でかなり重宝されている。

｢次、1年集団出発でーす。A組は待機してください｣
彼女の柔らかな声が響き部員達はスタート位置に着いた。
頑張ってください、と微笑む彼女はやはり有能なマネージャーだと。

と、誰もが思う訳でもないのが現実だ。