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Side松倉
宮「…今日も行くの?元太のところ。」
帰りのタクシーの中で、ちゃかが窓の外を見たまま聞いてくる。手元のスマホが、ぼんやりとちゃかの横顔を照らしだしていた。
倉「うん。パジャマも歯ブラシもパンツも、全部元太のとこに置きっぱだから。」
宮「そっか。このまま行くの?」
倉「うん。」
宮「じゃあ、俺も一緒に行っていい?顔だけ見たら、俺は帰る。」
もちろん、断る理由なんかない。ありがとう、と俺が言うと、ちゃかは小さく笑った。
宮「……松倉は、元太に参加してほしい?今度のツアー。」
倉「え、」
唐突な質問に、思わず固まってしまう。ちゃかは黙って俺の目を見ていた。
倉「…どっちでも、いい。どっちでもいいから、苦しい思いはしてほしくない。」
これじゃ答えになってないな、と思いながらちゃかの顔を見る。でも、ちゃかはただ頷くだけだった。
そこからは、お互いほとんど話をしなかった。ただ黙って後ろに流れていく夜の景色を眺めていて、気づけば元太の家の前にタクシーが止まっていた。
倉「元太、ただいま。遅くなってごめんね。」
元太から預かっている合鍵を使って、部屋の中に入る。少しして、スリッパのゆっくりとした足音が近づいてきた。
元「おかえり…。」
前髪の間からのぞく目が、俺の後ろに立っているちゃかを映す。少しだけ目を見開いて、元太は足を止めた。
宮「元太、久しぶり。調子どう?」
元「……うん、いい感じ。」
とってつけたような笑顔を浮かべて、元太が答える。よかった、と頷くちゃかは寂しそうに笑っていた。
宮「…じゃあ、俺もう帰るわ。下でタクシー待ってるし。元太、またね。」
元太の状態を察してくれたんだろう。あっさりとした挨拶を残して踵を返したちゃかの後姿を、俺は黙って見送った。
倉「元太、遅くなってごめんな。」
2人きりになった玄関で、もう一度同じことを元太に言う。元太は首を横に振ると、静かに俺に抱き着いてきた。
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おさと(プロフ) - る - るさん» る-る様、リクエストありがとうございます!またリクエストいただけたこと、いつもお読みいただけていること、本当に嬉しいです😭長くお待たせしてしまうかもしれませんが、しっかり書かせていただきます、! (2022年8月27日 17時) (レス) id: ede36f8a86 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - そらさん» そら様、コメントありがとうございます!またリクエストをいただけるなんて、本当に嬉しいです😭続編、書かせていただけるのが今から楽しみです!またまたお待たせしてしまいますが、気長にお待ちいただけますと幸いに存じます! (2022年8月27日 17時) (レス) id: ede36f8a86 (このIDを非表示/違反報告)
る - る(プロフ) - いつも本当に楽しく読ませて頂いています; ; リクエストなのですが、リアル設定で松倉くんが仕事に疲れ塞ぎ込んでしまっていってしまい段々と仕事にも来なくなりそこで全メンバーが松倉君を助けるお話が読みたいです。分かりにくくて申し訳ないです.... (2022年8月27日 13時) (レス) id: 6d6ceb074c (このIDを非表示/違反報告)
そら - →病気は悪くなるばかり。弱っていく青を見て桃は自信をなくす。そんな姿を見て白も昔を思い出し、桃だからできることがあると励ます。 (2022年8月25日 20時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
そら - たくさんリクエストある中恐縮ですが、またまたリクエストさせていただいてもよろしいですか。「夢のかたち」の続編で、研修医の桃さんが大きな病気と闘う青の担当に。頑張る青の姿を子どもの頃の自分と重ねてなんとか治してあげたいと奮闘するけど→ (2022年8月25日 20時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年8月10日 19時