S.tiger【病系短編集】11

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Side元太


河原を10分くらい歩いた先にある、チェーン店のカフェ。ドアを開けると、店の中はいつも以上に混み合っていた。



元「…じゃあ、やりますか！」


制服姿のカップルを横目に見ながら席を確保して、持っていた紙袋をテーブルの上に置く。せーの！と声を合わせて、俺と海人は同時にそれをひっくり返した。




元「…22、23、24個！お前は？20個？うぇーい！俺の勝ち！！」

海「うえぇ！まっいで、うえぇ！」

元「うざくて結構でーす！」


海人に向かってピースサインをして、テーブルの上で山盛りになっているチョコを1つ手に取る。





やけに多いカップルに、大量のチョコレート。この店に入れば、誰だって今日がバレンタインだって思い出すだろう。



去年の2月14日も、俺と海人はこの店でもらったチョコの数を競い合っていた。俺の高校とは違って、海人は中等部の子とかボランティアで来る大学生さんとか、いろんな人と関わる機会がある。よくわからないお姉さんに声をかけられていることもあるし、案外こいつはモテるんだ。




海「…おえあ、ちょお、くぅ、やね？」

元「たしかに。はたから見たら、俺らすげえクズ(笑)。」


海人の言うとおり、チョコの数を競い合ってるなんてチョコをあげた人が見たら100パー胸くそ悪い。俺はさりげなくテーブルの上を片付けて、店に入るときに注文したホットカフェオレをすすった。




元「……で？お前、なんで別れちゃったわけ？」


俺の質問に、海人の顔が少しだけこわばる。今日の男子トークは、若干暗い話題からスタートだ。



実は去年の今頃、海人にはもう付き合っている人がいた。海人にしては長く付き合ってんな、と思っていたけれど、先月あたり急に「別れた」と報告のメールが来ていたんだ。





海人は、もごもごと口を動かしてうつむいている。海人のことだからあっけらかんと別れた理由を説明すると思っていたんだけど………どうも、わけありみたいだ。

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