S.tiger【病系短編集】11

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Side龍也


海「うわ、よくこんな熱で踊れたな…。」


海人が持ってきた体温計を見ながら、渋い顔でつぶやく。横から覗き込むと、38.5℃と表示されていた。



海「まさか、ここまでやばいとはね…。」

龍「え、海人も気づいてたの？」

海「そりゃ気づくだろ、めちゃくちゃ顔色悪かったし。ていうか、お前こそ気づいてたの？」

龍「うん、なんとなく今日のまつくおかしいなって。」

海「なら、もうちょっと加減してやれよ！」

龍「ごめん…。」


たしかに、もう少し早く切り上げるとか工夫してあげればよかったのかも。失敗したな…。



倉「違うよ、俺が悪いの。頑張ればいけるって、思っちゃって。」


短くせき込んでから、それに、とまつくが言葉を続ける。


倉「…早く、みんなの反応見たかったっていうか。振付あたためておくのも不安っていうか。」

龍「あぁ、なんかそれはわかるかも。」


倉「でもさ、今日振り入れしてなんか感動した。1人で鏡に向かってるときは全然自信なかったけど、みんなが踊ってくれて、初めてリアルっていうか…立体になって。なんか、めちゃくちゃ達成感あったんだ。」


熱でとろんとしているまつくの目が、生き生きと輝く。それを見て、俺もなんだか嬉しくなった。



海「また別の大会出ることあったら、まるごと1曲クラの振付で踊るのもありだよな。」

倉「え、重いなぁ…。」


そう言いつつ、まつくの表情は嫌そうには見えない。むしろ、嬉しそうに笑っていた。


龍「その時は、いつでも相談乗るから。」

倉「…助かる(笑)。」

龍「ただし、睡眠優先でね。」


あ、と声を出してまつくがはにかむ。まつくはどうしても頑張りすぎちゃうところがあるから、ちゃんと自分も大事にしなきゃね。




最近きれいに染め直した金髪の頭をなでると、まつくはくすぐったそうに目を細めた。












「鏡の向こうの世界」fin.

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