最後の砦【TOKYO MER】 (ページ8)

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初出動7 ページ8

音羽「本日付けでTOKYO MERに配属となった厚生労働省の医系技官音羽尚と言います。」

喜多見「チーフの喜多見と言います。いやー、さっきはホントに助かりました。初出動で死者は0、良いスタートですね」

音羽「喜多見チーフのやり方では続かないと思います。レスキュー隊がトラックを切断している中でメスを入れるなんて聞いたことがありません。オペは安全で衛生的な所でやるべきです。」

喜多見「そうですね。」

A『…すみません』

音羽の正論が止まらない。チーフである喜多見に向かっての発言だが、暗に自分にも言っているんだとわかり、思わず謝る。

音羽「それに医師が死んだら他の命も共倒れになってしまう。だからこそ医師は安全な場所で待機すべきです。」

喜多見「うん、でも、待ってるだけじゃ助けられない命もありますから。まぁ、難しい話は抜きにして、協力して命を救うことができたんですから喜びましょうよ。」

喜多見が握手を求め、音羽に手を差し出す。
音羽は、差し出された手を少し眺め一言返す。

音羽「不必要な接触は避けましょう」

喜多見「お、おう！」

そうでした！と言わんばかりに喜多見は手を引っ込める。

音羽の言う医療従事者が危険な場所で治療をすべきでないという意見は尤もだ。だが、あの時処置したからトラック運転手の命は助かった。これも紛れもない事実である。
どちらも間違っていないからこそ難しい問題である。

“待っているだけじゃ助けられない命もある”

あの時、彼らのような存在がいれば、私の弟も助かっただろうか…
もし、TOKYO MERが正式認可されれば、悲しい思いをする人が少しでも減らせるんじゃないだろうか……

正式認可のためには問題が山積みだが、Aはふとそんなことを期待してしまった。