九月、渡り廊下にて ページ3
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今日は体育祭だ。
高校最後の体育祭だというのに、ギラギラと照りつける日差しのおかげでどうにも気分が悪い。頭がガンガンする。
昼休憩に入り、昼食をとるために学食やら教室やらに向かう生徒たちを見送り、私は人通りの少ない 一階の校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下の端に腰を下ろす。
気休めに手で風を送ってみたが全く意味をなさなかった。足を投げ出し、頭からタオルを被る。
汗でべたつく身体と湿気を含んだ生暖かい気温が不快で仕方ない。
何か水分を持ってきた方が良かったか。ズボンを漁っても小銭など入っておらず、結局教室まで戻らなければならないことにため息を吐く。
でも今はそんな元気はない。とにかく動きたくなかった。
「大丈夫か」
背後から砂利を蹴る音がして、澄んだ声が聞こえる。
数ヶ月前こそ愛しいとすら思ったその声は、今では耳が自然と遮断するようになっていた。
懐かしくも感じる声に後ろを振り返れば、タオルとペットボトルのスポーツドリンクを片手に持った北くんの姿。
淡い色の目はしっかりと私を捉えている。…ああ、今は。もうその目すらもなんだか怖いと思ってしまう。
『…なんでいるの』
「なんやふらふら歩いてくのが見えたから、心配になって見に来た」
ほれ、と差し出されたペットボトルに戸惑っていると、「買ったばっかやし口付けてへんから」と 未開封のキャップを緩めて手渡してくれた。
申し訳ないと思いつつも、私の身体は確実に水分を欲していたため 手渡されたスポーツドリンクを一口含む。
いつもは不味いとばかり思っていたそれはやけに甘くて美味しく感じた。日光に晒され続けたせいで身体は相当やられていたらしい。
『…お人好しめ』
「お人好しも何も、クラスメイトが体調不良になっとったら そら心配くらいするやろ」
『……まあ、うん。…ありがとう』
クラスメイトの前に、北くんにとっては昔告白されて断った相手だ。多少なりとも負のイメージがあってもおかしくない。
なのに今こうやって教室へ戻ろうとすると 手を貸してくれる辺り、やっぱり北くんは相当なお人好しだ。
現在身体も心も弱っている私にとって、ふられた相手に優しくされるというのは この上なく嬉しくも複雑なものだった。
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はやみこ - 北さん…かっこいい！とても素敵なお話でした。 (2020年5月24日 12時) (
レス) id: d7eec8a8e8 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - えええ、大耳くん？？？それは意味深だよぉぉ。君も素敵な男やなぁ。これぞ甘酸っぱいお話ですね。誰かの恋の裏には言い出せもしない失恋が隠れてるのかな何て勝手に想像してしまいました。 (2020年4月30日 23時) (レス) id: 8c1d6118a6 (このIDを非表示/違反報告)
氷水(プロフ) - うわあああ…たまたま見つけて読んでしまいましたが、とても素敵でした…素敵な北くんのお話をありがとう… (2020年3月26日 1時) (レス) id: b2d8d7cb3b (このIDを非表示/違反報告)
an20080321(プロフ) - もうさいっっっこうです！！素晴らしい作品ありがとうございました、、！！ (2020年3月12日 21時) (レス) id: ee660bdd63 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - ありすさん» ありすさんはじめまして、ありがとうございます...！！この作品で少しでも多くの方に北くんをもっと好きになって下さったら嬉しい限りです。コメントありがとうございました！！ (2020年2月25日 22時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月埜 | 作成日時：2020年2月14日 22時
