二月、学校前にて ページ20
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「北、この書類のここ、日付書いとって」
「わかりました」
先生に提出する書類に日付を書き込み、ボールペンをポケットに入れる。そろそろ試験やから頑張れよ、という先生の言葉に頷いた。
「ま、北なら大丈夫やと思うけどな」
「そうですか？でも、油断はできませんから。...失礼します」
「おー」
そのまま校舎の外に出て歩いていると、校門の前に 寒そうにマフラーに顔を埋めて歩く女性。既に何度も見た事のあるその歩き姿に声を掛けた。
「おお、内田。なんや最近よう会うな」
『あれ、北くん。…学校行ってたの？』
「おん、ちょっと先生に用事があってな、勉強ついでに」
自分は制服を着とるのに 目の前の内田は私服なのが変な感じがする。
私服というか、部屋着にコートを羽織ったようなその服装も、俺には新鮮に思えた。
『あ、そうだ』と思い立ったように鞄を漁り出す彼女。緩く笑って、彼女はいつしか前にもくれた ピンクの包みを俺に手渡した。
前は一個やったけど、今日は二個。その個数の差に何かあるんやろか、と考えてみても 理由はようわからん。
そこでさっき書類に書いた今日の日付を思い出す。...いや、でも。そんなわけ。
『…どうしたの？』
「……いや、前も同じもんもろたなあ 思て」
俺の反応を見て首を傾げた内田に咄嗟にそう返す。
コンビニにでも売ってそうな普通のチョコレートでも、その時の俺には特別なものに見えたのだ。否、今もそうではあるんやけど。
『…ごめん、嫌だった？』
「そんなことあらへんよ、俺 これ好きやってん。…けど、ほんまにええの？」
『いいよ、うちにもあるから』
「そうなんか、…なら有難く頂くわ」
ほんまに最近、俺は浮かれすぎとる。
この二つのチョコレートに、俺が思うような大層な理由なんて、隠れとるはずないのに。
「…俺もまだまだ子供やなあ」
彼女と別れてから少し経って、思わず零したその言葉は乾いた冷たい風に攫われて消えていった。
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はやみこ - 北さん…かっこいい！とても素敵なお話でした。 (2020年5月24日 12時) (
レス) id: d7eec8a8e8 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - えええ、大耳くん？？？それは意味深だよぉぉ。君も素敵な男やなぁ。これぞ甘酸っぱいお話ですね。誰かの恋の裏には言い出せもしない失恋が隠れてるのかな何て勝手に想像してしまいました。 (2020年4月30日 23時) (レス) id: 8c1d6118a6 (このIDを非表示/違反報告)
氷水(プロフ) - うわあああ…たまたま見つけて読んでしまいましたが、とても素敵でした…素敵な北くんのお話をありがとう… (2020年3月26日 1時) (レス) id: b2d8d7cb3b (このIDを非表示/違反報告)
an20080321(プロフ) - もうさいっっっこうです！！素晴らしい作品ありがとうございました、、！！ (2020年3月12日 21時) (レス) id: ee660bdd63 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - ありすさん» ありすさんはじめまして、ありがとうございます...！！この作品で少しでも多くの方に北くんをもっと好きになって下さったら嬉しい限りです。コメントありがとうございました！！ (2020年2月25日 22時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月埜 | 作成日時：2020年2月14日 22時
