運命って簡単じゃない ページ24
コナン君も昴さんも丁寧に靴をそろえて、なんだか似たような動き方でわたしの家を見回している。
「コナンくん、これ、原稿」
「わあ！ありがとう！今読んでもいい？」
「もちろんよ」
ソファに案内して、約束の原稿を渡せばコナン君は花が咲いたみたいにパッと笑った。
さっそくパラリと原稿をめくり始めるコナン君はなんだか遠足前のそれだ。
ウキウキ、ワクワク
そんな感じで足を動かしていた。
「Aさん、コナン君にサインをもらったと聞いてしまって、ぜひわたしにも…」
おこがましくてすみません。と色紙を渡してくれる昴さんはなんだか眉毛がハの字になっている。
「ファンの方と交流できる機会も少ないですし、サインぐらいどれだけでも書きますよ。そのかわり、昴さんの感想も聞いてもいいですか？」
「もちろんです」
ソファから離れて、作業をするための机に向かう。
パソコンを少しずらせば色紙くらいは置くスペースができあがるから引き出しからペンを取り出す。
「沖矢昴さん、ですよね」
「…えぇ」
さらさらっとサインを書いて、沖矢昴さんへ、の文字を添える。
「Aさん」
はい、どうぞ、と色紙を手渡そうとすると昴さんに色紙ではなく手を取られる。
「はい？」
「この間、わたしがあなたを口説いたこと忘れているわけではないですよね」
「え、えぇ…覚えてます」
「わたしは一二三のファンですが、それ以上にAさんに一目惚れした男です」
まっすぐ、こちらを見る眼鏡の奥の目。
ふわっと香ってきた男性の香りとその目に身体が金縛りに合ったように動かせなくなる。
「一目惚れした女性が、わたしが本を好きになるきっかけになった一二三同一人物だった。これは運命だとは思いませんか？」
口調は優しいけれども、ゆっくりと昴さんの顔が近づいてきているように感じてどこか怖い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：飛風 | 作成日時：2023年4月21日 16時
