男前な彼女の素顔がみたい No.9

401→隆二 ページ1

「Aが……」









苦手なのは、お菓子作りだけだと思ってた。









料理が出来て、掃除も洗濯もちゃんと出来て、バイクも車も乗れて、人付き合いが上手くて、困ってる人にはサッと手をかせて、その辺のなよっちい男より強くて……絡まれてる女の人をササッと助ける事が出来る、なよっちい男よりも男前なA。









まだこんな一面があったんだ。









臣「美穂が、その初物も隆二に持っててほしいって勝手にAの部屋からパクって来たんだって」








もう一度、渡されたばっかりの初物ミサンガをジッと見て……足に付けた。







勿論、昨日貰ったのが付いてるのと同じ足に。








臣「それは、Aの努力の証なんだと。

……どう？パワーもらえた？」









足首に付けた、２つを交互に見て。









俺は更にやってやるぞって気持ちになった。









・









これをもらった時の事を思い出して。









「A……、これ、今更だけど付けてていい？

まー、嫌って言っても返さないけどね？」








『え？！……うーん、まぁ、隆二がいいなら……どうぞ？』









困ったように笑いながら、そう返事をしてくれた。









「この２つで、俺はいつでも初心に戻れる…三代目の今市隆二の原点に戻ってこれるって思ったんだ」









『……今市隆二の、原点？』









「うん。初めは緊張とかで全然納得のいく歌を歌えなかったけど……何回も何回も練習して、積み重ねて、やっと今市隆二になったんだ。

このミサンガ見たいに、人前に出れるレベルになったの。

これを見る度、俺は昨日みたいなことも乗り越えていける気がするんだ」









『隆二……』









「だから、有難く、この人前に見せれないようなミサンガも頂きます」








『おい』









へへへっ！と笑えば、まったくもぉー。と同じように笑ってくれる。









『人前に見せれないようなとか……他にも言い方あるよね？ちょっとぐしゃぐしゃになったミサンガ、とかさぁー……』








ブツブツ言いながら、俺の足についてる２つのミサンガを撫でてるA。









ごめんね？






最後、照れてあんな言い回しになっちゃって。笑









けど、言ったことは全て本当だから。









臣「隆二ー、そろそろ時間！」









ドアをノックする音と、俺を呼ぶ臣の声。

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