９つの零れた涙 (ページ8)

今日:23 hit、昨日:34 hit、合計:247,491 hit

― 07 心の内側. ページ8

mgr,side.

「..あべちゃん」

コンコン、と２回ノックする。

返事がなくて寝ているのかと思い
階段を降りようとした時、

扉が開く音がした。

「..部屋に入っていいって、
捉えていいですか？」

微かに開いた扉の隙間を覗けば、
部屋の中の彼と目が合って
彼はしっかり頷いた。

頷いたことを確認して俺が部屋に入ると、
あべちゃんは床に座ったから
俺もフローリングに座って向かい合った。

「で。寝れてるんですか？」

「..寝れてるよ」

僅かに目が泳いで、
その後に小さく微笑んで答えた。

あ、嘘だ。と直感で思う。

「どれくらい寝れてます？」

「どのくらい、かぁ..
毎日六時間はぐっすり寝てる」

少し間が空いてからの返答。
数える仕草に、ぎこちない笑顔。

..というか笑っているというより、
口角を上げただけ。
目が笑ってないように見える。

また、嘘だと思った。..深読みしすぎかな。
でも嫌な予感は当たるからなあ。

「....めめ。」

考え込んでしまってたみたいで、
あべちゃんは何故か不安げに眉を下げて
俺を見つめていた。

「仕事の邪魔しちゃって、すみません。
気になったので。つい。」

「大丈夫だよ。..ごめん。」

仕事の邪魔になる、と思って
慌てて、立ち上がると予想外の言葉。

ごめん..？

「それは何に対してですか？」

その返しはどうやら想定外だったらしく、
それに対する言葉を
用意していなかったみたいで、
言葉に詰まった様子で俯き目を泳がせる。

..今、何を言っても
はぐらかされるだけだと思った。

これも直感、ですけど。
俺の直感って昔から当たるんです。

「寝れてないのなら。倒れたら、本末転倒。
..時間が無駄になりますよ。」

今すぐにでも寝てくださいって意味を込めて、
最後にそれだけ告げてあべちゃんを背に、
部屋の扉をそっと静かに閉めた。

この時、あべちゃんは
どんな表情をしていたんだろう。