― 25「他人優先ばっかり ページ27
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何で泣いてるの？とあべちゃんに訊ねられ、
泣いていたことに気づいた。
あべちゃんの優しさに
甘えてしまってることの罪悪感？
嘘つきな自分に嫌悪感？
“あの出来事”への恐怖から？
自分のことなのに、何が理由かわからない。
「わかん、ない..」
声が微かに震え、目頭が熱くなり溢れた。
慌てて雑に袖口で目元を拭う。
でも、視界がまたすぐに滲んで。
涙が止まってくれない。
さすがに上手く笑えそうにない。
はやく、泣き止まないと。
「自分でも.. わかんなくて..」
また、ぼろぼろと涙が零れる。
また..心配させてしまう。
だから..尚更。
止まれよ、早く涙止まれよ。
焦燥感で何度も袖口で目元を拭う。
乱暴に擦りすぎて目が痛い。けど、
そんなの気にしていられない。
俺が“しばらくここに居て”なんて
ワガママを言ったからか
どうしようか悩んでる様子で。
何かを言おうとして口を開けて、閉じて。
何も言わないで俺を見たり、
部屋をキョロキョロしてたり..
もう大丈夫だよ、って笑っても
あべちゃんは昨日のように
嘘だと見抜くだろう。
だから。何も言えなかった。
何より ここに居てほしい って
まだ思っていて。
らしくない自分に嫌気がさす。
..優しさに甘えてごめん。
「..さくま」
下唇を噛んで俯いていたら、
不意に優しい声で名前を呼ばれ
ゆっくり顔をあげ目線を合わせた。
渡されたタオルを受け取って
涙を拭いながら、ぎこちなく目を合わせる。
「もう大丈夫なんて、
そんな嘘はつかないでね..」
..やっぱりバレてた。
あべちゃんまで泣きそうな顔で。
何であべちゃんまでそんな顔すんの？
そんな顔をさせてるのは
間違いなく俺のせいなんだよ？
いつもの明るくて、いつも笑顔の
俺にはまだ戻れそうにない。
「ほん..と..っ、」
“ほんと、俺らしくないよな..っ！”
と、ぎこちなくても微笑もうとすれば
なぜか言葉がでてこなくて、
それを心が拒絶するように涙はまた溢れた。
あべちゃんの言葉から、
少し間が空いてぎこちなく頷いた。
明日にはまた、
いつも通りの俺に戻れるように。
「今日だけ泣かせて..」
一方的に告げると、
俺の中で何かがプツンと切れたように
子どものように泣いた。
何も喋れないほどに泣き続けた。
あべちゃんは、
何も言わずに背中をさすってくれた。
泣き止むまで、傍に居てくれた。
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作者名：侑(*´-`) | 作成日時：2021年5月11日 1時
