９つの零れた涙 (ページ26)

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確か、あべさんの部屋はここ。
階段を上って、一番端にある部屋。

それに各々が部屋を間違えないように
特徴付けているから。

あべさんの扉には、ドアプレートは飾ってない。

その代わりなのか、ドアノブの近くには
緑色の小さな星のシールが貼られてて。
..あとは扉の前に観葉植物。

そういえば入ったばかりのの頃にひかるさんが、
“あべのイメージカラーは緑色”
って言ってたっけ。緑だから観葉植物？

まあ、何でもいいや。

深呼吸をしてあべさんの部屋の扉を、
遠慮がちにコン、コン、と２回ノックした。

けれど。一切、返事がなくて。

え、ここじゃない？

会話したことのない人ばかり。
というかここに来て、
ひかるさんとめめとしか話してない。

他の人の部屋だったら..と少し焦ってきた。

もし違うならどんな顔すればいい？
いつもみんなにあんな態度をとっといて。

会話は最低限で、いつも無愛想。
露骨に嫌ってるような態度はとられてないけど、
だけど印象は良くないと思う。

確か、あべさんの隣の部屋は
さくまさんの部屋ってひかるさんが言ってた。

チラッと隣に視線を移すと部屋の扉の前に
飾られてるドアプレートには、

『さくまのお部屋！』
とピンクの色ペンで手書きで書いてある。

さらに、大きなピンクの星のシール付き。
..主張が強い人だな。

ん？

あべさんの扉に貼ってあるシールと似てる気がする。大きさと色が違うだけ。
大人がお揃いのシールって..この二人仲良いんだな。

ここの部屋が、さくまさんの部屋ってことは
即座に分かった。

さくまの隣ってことは、やっぱりここは
あべさんの部屋に間違いない。

再び、部屋の扉をノックしても反応がない。

..寝ているのかな。

心の中でお疲れさまです。と呟いた。

扉から離れて、再び自分の部屋に向かった。

.. 少しは話してみたかったな、なんて。
そんな感情は久々だった。

また俺は部屋に戻り、扉の鍵を閉めて
１人の空間に戻った。