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mm side.


次の日の朝 ― 8:30




「いつの間にか康二と仲良くなってたんだね」



朝食後。お皿を洗いながら、
隣でお皿を拭いているラウールに声をかける。





必要最低限の会話で関わりを避けていたのに、
何がラウールを変えたんだろう。



夕食の時、康二と話しているとき
今までと違って柔らかい雰囲気だったことは
俺の気のせいじゃないと思う。





「何となく話してみたら、話しやすい人で。
そこから話すようになったよ」




お皿を食器棚に直しながらラウールは答える。
よかった。ラウールに、他にも友達ができたんだ。





「二人ってどんな話をするの?」




少し、変な間があって。


「え?あ、普通の世間話だよ」

「今日の天気とか好きなご飯とか?」




そうそう、と背中を向けて応えるラウールに、
何となく違和感。



違和感が何かと訊ねられたら、
説明できない漠然としたものだけどさ。





お皿を洗い終えて、キュッと蛇口を閉めた。




「俺以外にも友達ができてよかったよ」





俺は本心からそう述べたんだけど、
振り返ったラウールの顔が少し引きつった。






「俺の親友はめめだけだよ。
康二くんにも、めめは自慢の親友って話してる」


「え?俺の話してるの?」




俺の言葉に、ほんの一瞬、目が泳いで。

「まあ。たまに」とだけ言えば
残りのお皿を拭き始めた。





俺の名前が出てくるとは思わなかった。
二人で居るときはどんな話をしてるのかな。





「康二くんと僕の気持ちが重なるとこがあって。
それで意気投合したってだけ」

 
「重なるところ?」



康二は、いつも明るくてムードメーカー。
かなり寂しがり屋で、常に誰かと話してて。
人と関わることが好きで音楽SHOPで働いてる。


そんな康二と、ラウールの重なるところ?




共通点を探していると、
ラウールが痛いところを突いてきた。






「あべくんとは最近話してる?」と。





そこに悪意は感じなかったけれど、
そっとしておいてほしいところでもあって。




「タイミングが合わなくて話せてない。」



咄嗟(とっさ)に嘘を吐いた。



あの日の。あべちゃんに壁を作られた日の。
やり取りを何も知らないラウールは、
この言葉で信じると思った。



「また話せるといいね」




その"また"は"いつ"に、なるのか分からない。
1ヶ月後?それとも半年後か、1年後か。


話せる日が、来るのかな。なんて。




ラウールは、何も知らないと思ってた。

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作者名:侑(*´-`) | 作成日時:2021年10月8日 15時

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