９つの零れた涙２ (ページ20)

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wtnb side.

同日 ― 深夜 ―

「はぁっ.. 」

悪夢をみて、目が覚めた。

荒い呼吸をしながら目だけ動かし部屋を見渡す。

真っ暗な部屋の中、手探りで
近くにある物に闇雲に触れていく。

今の現実が“こっち”だと、
さっきまでのことがただの夢であると
脳に認識させようとする。

また。また “あの頃の夢” をみた。
動悸は激しく、息苦しい。

もう何年前？いい加減、
忘れることができたらいいのに。

涼太....

あの日のことを背負ってるのは、
俺だけじゃない。

涼太は、いっつも俺のことを庇って..

だめだ..息が苦しい..

堪えきれずにベッドから起き上がり
頓服薬を飲もうとしたけど、
テーブルにその為の水が無いことに気づく。

そうだった、
昨日はいつの間にか寝てて..
部屋に水を持ってくるのを忘れていた。

口元を手で抑えながら、
ゆっくり階段を降りていく。

誰にもこんな姿をみられないように。

ササッと水だけ持って、２階に..

「..翔太？」

ふらふらとした足どりで階段を降りて
音を立てないように、
静かにリビングの扉を開ければ

またあべちゃんが居た。

だけど今回は俺を見て目を見開き、
駆け寄ってきた。そんな彼に思わず後退りし

「だい、じょ、ぶ。こ、ないで..」

口元を押さえていた手で襟元をギュッと握り
荒くなった呼吸を整えようとしながら、
必死に声を絞り出してそう伝えた。

俺が戻すのかと勘違いしたのだろう。

あべちゃんは心配そうに俺を見つめていた。

コップに水を入れ、
すぐにその場を立ち去ろうとした時

「わ..っ」

一瞬、ふらついて視点がゆっくり変わり、
“やばい”と思った、その時。

すぐあべちゃんが駆け寄り俺を支えてくれて
そのまま転倒することはなかった。

ほんの一瞬だったけど、

あべちゃんの服の袖口が捲れて傷痕が見えた。

「あり、がとう‥」

顔を見つめ、ゆっくりとそう言った。

あべちゃんは首を横に振り柔らかく微笑む。
「転ばなくて良かった」と。

“似た者同士” なんて言葉が、
俺らには合ってるのかもしれない。

酸欠でボーッとする頭でそんな風に思う。

早くこの過呼吸から解放されたいし、
..気まずいし。
それ以上は会話をせずにリビングから離れた。

また自室に戻ればすぐに安定剤を飲んだ。