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39* ページ42

また部屋には沈黙が流れる。


誰が悪いか。言うまでもなく私だ。






審神者として、仕事をもらって

審神者として、こんな大きな家を与えてもらって

審神者として、山姥切さんに認めてもらって

審神者として、本当に久しぶりに誰かに必要とされたのに。




そもそも見ることさえ叶わないだなんて、もう、何も、できないじゃない。


本日より審神者になった、だなんて自分を紹介したのが恥ずかしくてたまらなくなった。



私はまだ、審神者でも何でもない。

昨日までと何も変わらない。ただの私のままだ。





『…っ』



堪えきれなくなった涙が、布団の上に何粒も落ちた。


すべて私が悪いのに、泣くだなんて卑怯だ。

泣くな。泣くのは私じゃない。

一番辛いのは、私なんかじゃない。


選択権も無く、こんな私の元に来てしまったお二人が、何より気の毒だ。




泣き止め。泣き止め。



そう思えば思うほど、涙はとめどなくあふれてくる。


『うぅ…』


声も抑えられなくなって、唇を強く噛み締める。




早く泣き止んで、お二人に謝るんだ。

自分でも痛いほどに握り拳に力を籠める。



前田「…山姥切さん、少し主君と二人で話しても構いませんか?」



沈黙を破った前田さんの言葉に下を向いたまま全身が硬直する。

…また刃を向けられはしないだろうか。




山姥切「わかった」



襖が閉まる音がした途端、


前田「…主君、先程は事情も知らず取り乱してしまい申し訳ありませんでした。


山姥切さんからお話を伺いました。…Aさん、僕の主は貴女だけなんです。」




前田さんの優しい声が突然近くで聞こえたかと思うと


力を籠めた手にふんわりと温かい何かが覆いかぶさる。



前田「だから、もう泣かないで…この手をほどいてくれますか?」



今度はまだ止まらない涙が目元ですくわれている感触。



前田「主が傷つくのなんて、見たくないですから、ね?」



そんな優しい言葉をかけられて、涙が止まるはずもなく


私より一回り小さな体に抱きしめられて、何年ぶりかに声をあげて泣いた。

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ユウカ(プロフ) - 愁(しゅう)さん» 初期刀まんばちゃんなんですね!私は宮崎と同じむっちゃんです!笑 初期刀って愛着湧いちゃいますよね〜(*^^*) (2016年12月6日 8時) (レス) id: fc6ad45da9 (このIDを非表示/違反報告)
ユウカ(プロフ) - 花日松さん» いえいえこちらこそわかりにくい表現をしてしまって申し訳ありませんでした!ご丁寧に返信までありがとうございます! (2016年12月6日 8時) (レス) id: fc6ad45da9 (このIDを非表示/違反報告)
愁(しゅう) - 僕と初鍛刀が同じなことに悶えました← (2016年12月5日 22時) (レス) id: 47c2114946 (このIDを非表示/違反報告)
花日松(プロフ) - ユウカさん» そうだったんですか!すみませんちゃんと見てなくて! (2016年12月5日 13時) (レス) id: 6d8f5ab43f (このIDを非表示/違反報告)
ユウカ(プロフ) - 花日松さん» コメントありがとうございます!冷却材のほうは一応31話のほうで書いているのですが、作者の解釈で大変わかりにくい表記になっていますね…。申し訳ありません!今後はわかりやすいように尽力します!更新頑張らせて頂きます! (2016年12月5日 12時) (レス) id: 090ea0c50e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユウカ | 作成日時:2015年9月3日 21時

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