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だから、こんな日が来るのも分かってはいたんだ。
でも、心の準備は整っていなかったから、思わずフリーズしてしまった。
「…おれ、もう大丈夫だから、みんなで仕事に行ってもいいよ」
「え……」
真っ直ぐ俺たちの目を見てそういう大ちゃんは、嘘をついているようには見えなかった。
「おれのために、誰かハウスに居てくれるようになったんでしょ…？
…でも、もう平気。
ちゃんと一人で待っていられるから、気にしなくていいよ」
下手くそな笑顔だった。
大ちゃんの笑顔には、みんなを幸せにする力がある。
でも今の大ちゃんの笑顔には、とてもじゃないけどそんな力はなかった。
嘘でしょ。
そう言いたかったのに、俺の口からは言葉が出てこない。
大ちゃんの目が、全ての言葉を拒絶するかのようだったから。
なんで。
絶対に大丈夫じゃないじゃん。
なんでそんなふうに強がるの。
伝えたいのに、どれも言葉にならない。
そのままリビングを去ろうとする大ちゃんをとめたのは、薮のため息だった。
「っ……」
薮のため息を聞いて、大ちゃんは肩をびくつかせてその場でとまった。
「大ちゃん、おいで」
ここ、座って。
優しくそう言っているのに、どこか断れない威圧感がある薮の言葉に、大ちゃんは大人しく椅子に座る。
「謝るのは俺たちの方だよ」
そう続けた薮の声に、今度は大ちゃんが固まる番だった。
「大ちゃんにそんなこと言わせる前に、きちんと話をすればよかったね」
「話……？」
不安そうな大ちゃんを横目に、薮はパソコンを開き始めた。
ずっと不安げな表情をしている大ちゃんとは反対に、俺たちは少し落ち着きを取り戻していた。
準備ができたらしい薮は、大ちゃんにパソコンの画面を見せると同時に、
「俺たちの仕事のこと、大ちゃんにも伝えさせて」
そう言った。
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作者名：まり | 作成日時：2022年10月30日 15時
