・ ページ28
yb
あれから5日。
大ちゃんに呼ばれて行くと、テーブルにはこの間渡した資料が並べられていた。
「…これ、ありがとう」
「あぁ、うん」
大ちゃんは、並べられたうちの1つをゆっくりおれの前に差し出した。
「……高卒認定、とりたいなって」
いいかな…?、とこっちを伺うようにじっと見る。
俺の返事は、すでに決まってる。
だって、大ちゃんが自分で決めたことなんだから。
「もちろん、いいよ」
はっきり伝えると、大ちゃんはほっとした顔をした。
でもすぐに顔を引き締めると、
「…どうしたらいいかな?
手続きとか、参考書とか、おれ全然分からなくて…」
そう聞いてきた。
「大丈夫、ゆっくりやってこ」
安心させるように言うと、素直にうん、と頷く。
大ちゃんのために、できることはなんでもやるよ。
その気持ちとともに、さっそく準備を始めた。
・
・
・
・
それから数日が過ぎて。
色々準備を終えたから、ハウスのみんなを集めた。
大ちゃんが勉強をしたいと言ったことと、高卒認定をとることにしたことを伝えると、みんなは自分の事のように喜んだ。
特に山田は、大ちゃんが高校を途中で辞めたことが気になってたみたいだから、人一倍嬉しそうな顔をしていた。
そんな山田を見る大ちゃんもまた嬉しそうで、見てるこっちまで嬉しくなってしまう。
「大貴、なんでも聞いてね」
「俺も結構教えてあげられると思う」
知念と伊野尾は、自信満々にそう言って。
「勉強は分かんないけど、応援はがんばるね」
「家事とか、気にしなくていいからね」
雄也と光は、自分たちにできることならなんでも、とサポートすることを伝えて。
「俺もなにか勉強しようかなぁ」
「えー、ずるい!俺も大ちゃんと勉強したい!」
マイペースな裕翔と大ちゃん大好きな山田は、口々に好きなことを口にして。
それぞれの言葉を受け取った大ちゃんは、一人一人に丁寧にお礼を言った。
そして最後に、後ろからみんなを見ている俺に向かって、
「…いっぱい調べてくれて、ありがとう」
そう言って笑った。
これくらいなんてことないよって返したけど、照れ隠しだったのがみんなにはバレたようで。
からかわれたけど、たまにはいいか、と思ったり。
やりたいことを見つけて、みんなに囲まれて笑って。
大ちゃんのこれからが楽しみになった。
175人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まり | 作成日時:2022年10月30日 15時