闇の先へ、２ (ページ23)

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やりたいことページ23

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ある日の昼下がり。

いつも通りリビングでパソコンを触っていると、薮ちゃん、と控えめな声に呼ばれた。

振り返ると、俺の様子を伺うような表情の大ちゃんが立っていた。

「…ごめん、今忙しい…？」

「あぁ、いや、大丈夫」

いつでもできることだし、とパソコンを横にずらして、大ちゃんに椅子に座るよう促す。

大ちゃんから声をかけてくるの、珍しいな。

なんて考えながら、大ちゃんが言葉を発するのをじっと待つ。

俺は、ハウスにいる間も仕事をしてることが多い。

自分の立場上、みんなより仕事量が多いからね。

でも急ぎでってことはほぼないし、リビングで仕事をしながらも、誰かと話したり出かけたりすることもある。

ただやっぱり話しかけにくいのか、ハウスに来てしばらくは、俺に話しかけてこない人が多い。

大ちゃんも例外なくそうだった。

「あの、ね……」

ようやく喋り出した大ちゃんから聞こえた言葉に、俺はまぬけな言葉を返すことしかできなかった。

「勉強、したくて……」

「……へ？」

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大ちゃんの言いたいことを大雑把にまとめると、

・中学校までは通っていたけど、家のことがあってほとんど勉強ができなかった
・高校は入ってすぐで辞めてしまった
・時間があるし、今後困らないための教養を身につけたい

ということだった。

「勉強したいなんて珍しいね」

学生の頃は、みんないかに上手く勉強を回避するかって感じだったしな。

そう思って素直に伝えると、歯切れの悪い返事が返ってくる。

根気強く待っていると、ゆっくり口を開いた。

「…この間、熱を出したことあったでしょ？」

「あぁ、うん」

「そのとき、知念に、これから長いんだしって言われて…」

「うん」

「…今まで、先のことなんて考えたことなかったけど…。

考えていいんだな、って思えたの」

「……」

「…それで、考えてみたときに、おれはなにも知らないなって思って…」

「…なにも知らない、っていうのは？」

「…社会のこととか、お金のこととか、いろいろ。

みんなが、当たり前に自分で考えてやってること、今のおれじゃ、多分何もできない」

大ちゃんは、月影のオーナーに言われるがまま、従って生きてきた。

だからたしかに、年齢の割に知ってることが少なかったり、言動が幼かったり。

それを気にしてたってことか。