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「ちょっと行ってくるね」
「いってらっしゃーい」
天気がいい日の昼。
趣味のドライブに行こう、と思いつき、車のキーを持ってハウスを出た。
俺がこうやってふらりとドライブに行くことがあるのを知ってるみんなは、さらりと俺を送り出す。
すると、
「っあの!」
俺を呼び止める声がした。
振り向くと、有岡くんがこっちを見ていた。
「どうしたの?」
なにか用かな、そう思って聞いてみると、
「…おれも、一緒に行ってもいい?」
「……へ?」
ドライブ、一緒に行っても、いいかな、って…。
どんどん小さくなる声。
どうやら聞き間違いではないらしい。
突然のことで驚いた俺は、間抜けな声を出して固まってしまった。
そんな俺を見た有岡くんは、
「っあ……、ごめんなさい……」
そう言って、ハウスの中に戻ろうとするから、
「行こう!!」
慌ててそう言って、有岡くんの腕を掴んで助手席に乗せ、車を動かした。
内心、バクバクになりながら。
いつもなら音楽に乗せて鼻歌を歌いながら優雅に運転しているのに、今日は音楽が全く耳に入ってこない緊張のしよう。
だって、隣に有岡くんが乗ってるから。
強引に乗せたはいいものの、これでよかったのだろうか。
そんなことを考えながら、絶対に事故らないようにといつもよりしっかりハンドルを握る。
俺のそんな心中を知ってか、有岡くんはしばらく黙って助手席に座っていた。
ハウスは、都会の喧騒とは少し離れたところにある。
ハウスを出て、都会を通り抜けて、少しずつまた開けた道に進んで行った時、ようやく有岡くんは口を開いた。
「…いつも、どこに行くの?」
見たことのない道、景色。
この先どこに着くのか想像できないであろう有岡くんは、そう尋ねた。
「海だよ」
慣れたようにそう答える。
海?と不思議そうな声。
「好きなんだよね、昔から」
「そうなんだ……」
それから、最近行った?とか、泳げる?とか、静かな会話を交わしていると、目的の海に到着した。
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作者名:まり | 作成日時:2022年10月30日 15時