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「…ここ、座ってもいい？」
休みの日の夜。
ソファに座って、リビングのテレビで映画を見ていると、大ちゃんがやってきた。
「どうぞ？」
そう言って少し右側に寄ると、ソファの左端の方にちょこんと座る大ちゃん。
しばらくそうしていたら、大ちゃんの方から声を掛けられた。
「…なに見てるの？」
「洋画だよ」
「何言ってるか、分かる？」
「いやー、英語はそんなに。字幕見てるし」
「…面白い？」
「んー、これはそんなかも」
「…よく、見てるよね」
「映画好きだからね」
「そっか…」
映画を見つつ、そんな会話を交わす。
俺が映画を見る度、ソファの後ろにあるテーブルから、大ちゃんがこっちをちらちら見てるのは知ってた。
でもこうやって隣に座って話しかけてくるのは初めてだから、なんだか新鮮。
「大ちゃんは？」
「……え？」
「映画とか、見る？」
なんとなく、そう聞いてみる。
「……昔、一度だけ、見に行ったことがあるよ」
「なんてやつ？」
「…小さかったから、覚えてない」
「そっか」
「…映画見るの、おもしろい？」
「おもしろいよ。当たり外れはあるけど」
「……そっ、か…」
その後も、どういう意味？とか、あれなに？とか聞かれる質問に答えつつ、気づいたら映画は終わっていた。
「大ちゃん、なんか見たいのある？」
せっかく一緒に見てるんだし。
そう思って聞いてみると、え……と固まってしまった大ちゃん。
「ごめんごめん、そんな固まんなくても」
「ぁ……、俺こそ、ごめんなさい……」
なんて大ちゃんが謝るから、俺は首を傾げる。
「なんで謝んの？」
「…だって、映画見るの、邪魔しちゃって……」
いっぱい話しかけちゃったし…。
そう言って俯いていく。
「一緒に見れんの楽しいけど」
素直にそう伝えると、…そっか、と納得した表情になる。
それを確認して、なにか見たいのある？ともう一度聞くと、
…今日は、もう寝る、と時計を確認して立ち上がる。
あ、そんな時間か、と思いながら、部屋へ戻っていく後ろ姿に一言。
「今度は、大ちゃんが見たいの見ようね」
そう伝えると、
「…うん」
ちょっと嬉しそうに返事をするから、俺はしばらくソファから動けなかった。
「……伊野尾ちゃん、なにやってんの？」
「いや……、大ちゃんがかわいくて」
「あー………」
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作者名：まり | 作成日時：2022年10月30日 15時
