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ある日の昼。


食器を片付けていると、珍しく大ちゃんから話しかけられた。





「あの、光くん……」


「ん?どうした?」





こっちから話しかけることはあるけど、大ちゃんから話しかけられることは初めて。

珍しいな、なんて思いながら、手を止めて大ちゃんに向き合う。





「えっ、と……、あの…………」





言葉に詰まる大ちゃん。

急かさず、大ちゃんのペースを待っていると、ゆっくり顔を上げて話し始めた。





「その…、なんか、おれにも、できることないかな、って…」


「できること、って?」





大ちゃんがこんなことを言い出したのも初めてだから、なんのことを言っているか分からなくて。

すると大ちゃんは、小さいながらも、さっきよりはっきりとした声で喋り始めた。




「おれ、ずっとここにいるだけで、何もできてないし…。

みんなは仕事もしてるから忙しそうだけど……。

だからせめて、家事とか、なにか手伝えることないかなって思って……」


「大ちゃん……」





大ちゃんがそんなふうに考えていたなんて、知らなかった。

たしかに夜は仕事に出てる人が多いし、多少バタバタすることはあるけど。

そもそも7人が8人になったところでそう変わらないし、俺は気にしたことがなかった。


でも大ちゃんは、そこに後ろめたさみたいなものを感じていたんだな。





「ありがとう」


「……え」


「色々気にしてくれたんでしょ?」




素直にお礼を伝えると、少し照れたような様子でそんなことないです、なんて言って。

かわいいなって思いながら、言葉を続けた。





「特別なにかが忙しいってことも無いし、大ちゃんはゆっくりしてて大丈夫だよ?」





紛れもない本心。

でも大ちゃんは、納得いかないらしかった。





「……なにか、したいんです。

仕事でも、手伝いでも、なんでもいいから」





思いのほか、強い気持ちがそこにあるみたいだった。

まぁやりたいと言っていることを、無理にさせない理由もないし。





「分かった」


「……!」


「じゃあ、明日から少しずつ、家事の手伝いしてもらってもいい?」





家事ならハウスから出なくても済むし、自分にも関係のあることだからやりやすいかな。

そう思って提案してみる。





「……うん…!」






俺のその提案に、大ちゃんは少し明るい顔をして頷いてくれた。

大ちゃんが自分からなにかをしようとしてくれたことが、俺もこの上なく嬉しかった。

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作者名:まり | 作成日時:2022年10月30日 15時

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