買い物 ページ6
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「買い物……？」
「そう、買い物」
ここ最近日課になってきた洗濯物の片付けをしていると、急に高木さんと山田に声を掛けられた。
「大ちゃん、自分の服とかほぼ持ってないでしょ？
なにか買いに行かないかなって思ってさ」
「みんなみたいに自分の食器とかもないし…。
いつまでもお客様用を使うんじゃなくて、有岡くん用のやつを買ったらどうかなって話してたんだよね」
2人にそう言われ、少し考えてみる。
正直、気にしなかったと言えば嘘になる。
食器はまぁなんでもいいけど、服はずっと自分の物じゃないものを借りていたから。
というのも、おれが着ていたのはどれも何年も着ていた古くてボロボロのものばかりで、正式にハウスに引越してきたときに、山田と一緒にほぼ捨ててしまった。
7人も住んでるからいくらでも貸せるし、お下がりでよければいくらでもあると思うよ、という山田の言葉に甘えていたんだ。
でも住み始めて約3週間。
外に出ることはまだないけど、ハウスの中ではそこそこ活動するようになった。
部屋にこもっていた時は、汗とはほぼ無縁な生活だったのに、今はサンルームで洗濯物を干していると、嫌でもじんわりと汗をかく。
人の服で汗をかいて、それを返すのって申し訳ないなって。
だからといって素直にもらえもしないし。
だから、ありがたい提案だった。
でも、どうしても無視できない懸念が一つあった。
「…でもおれ、お金なくて……」
そう、お金の問題。
薮くん達が月影から慰謝料？として多額のお金を渡してくれた。
しぶしぶ受け取ったものの、使う気にはなれず。
だからといってほかに使えるお金はなく、貯金もほぼ0に近い。
「そんなの気にしなくていいよ。
俺たちいくらでも出すし」
「いや、そんな訳には……」
優しいみんなならそう言うのも分かってる。
けど、これ以上無条件に甘えさせてもらうのも……。
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作者名：まり | 作成日時：2022年10月30日 15時
