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あれから1週間とちょっとが経った。
あとから知った、あの高木様というお客様は、次の日にまたご来店されたものの、その後は1度もお店に姿を現すことはなかった。
まぁ、夜の店なんてそう頻繁に来るものじゃないし。
あの日から数日間、ナンバー2の機嫌は最悪だった。
でも最近は少し収まってきたのか、いつも通りの嫌われ方に戻ってきた。
オーナーも相変わらず。
……おれは、あの日からずっと、寝つけないでいた。
理由は言わずもがな。
頻発する嫌がらせ、オーナーからの視線とプレッシャー。
さらに、眠るとそれらを夢に見た。
仕事のミスだけはしないようにと必死にやっているものの、みんなが帰れば途端に気が抜けてしまって。
いつも午前6時には店を締めるのに、最近は気づけば7時を過ぎてることも多かった。
帰ってもねむれないし、仕事に休みはない。
完全に負のループだった。
それが、積もりに積もったらしかった。
やっぱり7時を過ぎてようやく店を締め、家への道を歩いていたとき。
「っ…………、」
ふと力が抜けた。
ダメだ、と思いながらも抗えず、おれは、そのまま意識を落としてしまった。
っ…………、
……薄暗い……。
でも、すごくあたたかい……。
ここ……、どこ………？
ガチャ
「あ、起きました？」
「っ……」
急に差し込んできた光に眩しさを感じて、思わず目を閉じる。
「あっ、ごめんなさい、眩しいですよね」
そう言いながら、男が1人、近づいてきた。
「あの……、大丈夫ですか？」
「…え、っと………」
ここがどこで、相手が誰かも分からないおれは混乱して、言葉が出ない。
「あ、そうですよね、説明しないとびっくりしますよね」
急に納得したように喋り出したその男は、少し電気を明るくしたあと、大きい体をかがめて、おれが寝てるらしいベッドに近づいてきた。
「俺、中島裕翔っていいます」
「はぁ………」
「あなた、急に道で倒れたみたいで、人だかりができてたんです」
あ、そうだ……。
帰り道、急に意識がとんじゃったんだ……。
「救急車呼ぶかってなってたんですけど、見た感じそんな重体って感じでもないし、大事にしてもあれかなって思って、うちに連れ帰ってきちゃいました」
それで知らないところに……。
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作者名：まり | 作成日時：2022年9月12日 18時
