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「……小学生のときまでは、貧乏だったし、お母さんと2人だったけど、普通の家だったと思う」
一つゆっくり息を吸った。
そして、話し始めた。
「…貧乏で、学校の支払いはいつもギリギリだったし、服は同じのばっかり着てたし、朝ごはんは食べれたことなかったけど…。
でも、友達もいたし、学校では勉強も遊びも楽しくしてだと思う…。
お母さんも、忙しそうだったけど、すごく優しかったし…」
今思えば、あの時期が一番幸せだったのかもしれない。
「…山田と出会ったのも、小学生のときだよね」
「…うん。
俺が2年生のとき、大ちゃん家のすぐ近くに引越しして、そこからいつも一緒に遊んでた」
近所に近い歳の子供がいなかったおれは、山田が来てすごく嬉しかったんだ。
だから、毎日毎日一緒に遊んだ。
山田の家によく遊びに行ったのも、小学生のときだった。
「…変わったのは、中学校に上がってすぐの頃。
……母さんが、死 んだんだ」
誰かの、息を飲む声が聞こえる。
「…過労とか、色々重なって倒れて、そのまま死 んじゃったんだけど。
……母さん、シングルマザーだったから、おれ、身寄りがなくて。
それで、おれが小さいころに離婚したらしくて、一度も会ったことがなかった、…父さんと、暮らすことになったの」
ここからが地獄の始まりだった。
「……父さんは、出処が分からないお金をたくさん持ってて、それをギャンブルやお酒でたくさん使ってた」
今でも覚えてる。
いつも父さんは、酒の瓶や缶に囲まれてた。
「……気に入らないことあったら、すぐ怒鳴るし、…すぐ殴るし……。
…学校のお金とかも、なかなか、出してもらえなくて……」
思い出したくない記憶。
声が震える。
すると、右側からぬくもりを感じた。
……顔を上げると、山田が優しい顔でこっちを見ていた。
山田は、一つ息を吐くと、少し喋らせてねと言って、みんなの方を向いて話しだした。
「小学校まではね、大ちゃん、お日様みたいだったの」
「お日様……？」
「うん。
いっつもにこにこ笑って、周りの人達を笑顔にしてた。
でもお父さんと暮らし始めてから、人が変わったように、こう……、暗く、なっていったの」
「……」
「心配かけたくなかったのか、俺には絶対になにもないよって言うんだけどね。
俺から見ても、周りの人から見ても、大ちゃんが変わったのは一目瞭然だったと思う」
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作者名：まり | 作成日時：2022年9月12日 18時
