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ym
「……高校は、どうしたの…？」
「3年間通って、ちゃんと卒業したよ」
「どうして…？」
そうだよね。
学費もバカにならないし、辞めればよかったんだと思う。
でも…
「…もしまた、大ちゃんが戻ってきたらって思ったら、辞められなかった」
「……！」
同じ高校に通えば、大ちゃんに会えるかもしれない。
そんな淡い希望を抱いて、身体に鞭を打って、学校に通った。
「…ごめん……」
そんな俺の気持ちを聞いて、大ちゃんから返ってきたのは謝罪。
でも、そんなのが欲しいわけじゃない。
「謝らないでよ」
「だって……」
「部活はほぼできなかったし、友達も少なかったけど、卒業したこと後悔してないから」
大ちゃんに会うためだけに行ってた。
でもそれなりに、楽しかったんだ。
「…そっか……」
大ちゃんのその声を聞き、続けるね、と話を再開させた。
「高校1年生の頃から身体を売ってたんだけどさ。
卒業して、どうしたらいいか分かんなくなっちゃって」
まともに就職するのは諦めた。
きっと自分の夜の姿を知ってる人と会うから。
「だから、ただ身体を売り続けた」
卒業して2年半。
妹にはそれっぽい嘘をついて。
大丈夫だよ、何も気にしないでって笑って。
「…それでね、その日たまたま声を掛けたのが薮ちゃんだったんだよね」
身体を売った相手とのことなんて、ほとんど記憶にないのに。
薮ちゃんと出会ったあの夜だけは、今でも鮮明に覚えてる。
「あの日から、俺は救われた」
見た目ばっかり整えて、中身はボロボロの俺をすぐに見抜いて、薮ちゃんは俺を強引にハウスへ連れていった。
気づいたら事情を話していて、周りにはあたたかい人がたくさんいた。
「薮ちゃん、言ってくれたんだ」
『お前が自分を犠牲にする理由なんてないよ』
『もっと明るいところで生きよう』
『俺たちと一緒に』
その晩、俺は泣いた。
父さん達が死んで散々泣き明かしたあの日から、一度も泣いていなかったのに。
決壊したかのように、涙が溢れ出した。
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作者名：まり | 作成日時：2022年9月12日 18時
