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勇気を振り絞って、恐怖と戦っているだいきくん。
彼から聞いた話は、俺が予想していたものと同じだった。
「伊野尾」
薮の声。
次は俺のターン。
「借金って、これのことですよね」
「っ……！それは………！」
俺が出したのは、1枚の借用書だった。
「なぜそれを………！」
「これ、だいきくんのお父さんの名前ですよね？」
「っ………！」
オーナーは言葉を失い、ただでさえ白い顔を、さらに青白くした。
「この借用書において、連帯名義人になっていないだいきくんには、父親が死亡後、借金を払う義務はありません」
「それどころか、本来払う必要のない借金があると偽って労働させていたのであれば、法的に罰せられるのは、もちろんあなたです」
こんなこと、許しちゃいけない。
「そもそも、借金の返済と違法な労働にはなんの関係もありません。
あなたがだいきくんに強いていたことは、何一つ許されない」
俺が、許さない。
「っ………、おまえっ！
なんの権利があって、そんなことを……！」
まだ噛み付く元気があるのか。
でも、これで最後。
「権利……？
これを見ても、同じことが言えますか……？」
俺がポケットから出したのは、1つのバッジ。
「弁護士………！」
「お前みたいなやつから困っている人を救うために俺はいる」
「っ………！！」
許さない。絶対に。
動かなくなったオーナーを横目に、もう一度だいきくんの元へ。
目に涙をためながらも、必死にこっちの話を聞いて、現実から目を逸らさない。
君は強いよ。
だから、もう少しだけ。
「だいきくん」
「助けて、って言ってごらん」
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作者名：まり | 作成日時：2022年9月12日 18時
