闇の先へ、 (ページ14)

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その後俺は、意識を失ってしまっていたその子を抱え、知念と共に誘導された部屋に移動した。

「……あ、あの………」

部屋に着いて早々に、あちらに背を向け治療し始めた知念。

会話する気がないらしい。

「治療費もいらないし、今日のお代はきっちり払うので、閉店までここ貸してください」

「……えっ、と………」

なにが納得いかないんだろう。

……やっぱり、この店にとってのこの子は………。

「……邪魔だから、早く出てってくれる？」

「っ……！…はい………」

知念の一声で、ようやくオーナーは部屋から姿を消した。

その後、知念は黙々とその子を治療していた。

ひと段落ついたあたりで、知念に声をかけた。

「どう？」

「貧血、寝不足、軽い栄養失調」

「…ひどいね」

「傷は深くないけど、体中にアザがあった」

「ってことは……」

「…今日、来てよかったよ」

「………だね」

ずっと耐えてきたんだな……。

思わず、その子の頭を撫でた。

ふわふわした髪なのに、髪の毛の先はどこも乱雑で、それだけでこの子の生活が分かるようだった。

「…必ず、助けてあげるから」

閉店間際、オーナーから声を掛けられてその子を起こすと、ひどく動揺していたようだった。

その子は体を起こすのもままならず、しかしオーナーは、当然のようにそのまま帰らせようとしていた。

それにまた機嫌を悪くした知念の提案で、その子を俺たちの車に乗せ、家まで送っていくことになった。

おまけに5日間の休みを取り付け、店を出た。

……オーナーと俺たちの会話を聞いていたその子は、ずっと俯いていて、ただでさえ色の悪い顔をさらに青白くしているように見えた。

送っていった家は、見たことないくらいボロボロで、その子を心配する要素を増やす原因にしかならなかった。

遠慮しながらも家まで送らせてくれたけど、最後まで暗い顔をしていて、体調も悪そうだった。

「…薬、ちゃんと飲んで、それも食べるんだよ」

知念が持っていた薬と、途中で寄ったコンビニで買い込んだ食材を渡す。

「…あの……」

そこで初めて、その子は俺たちに向けて声を発した。

「…ありがとう…ございました………」

布団から起き上がれないまま、でもしっかりとお礼を言った。

後ろ髪を引かれるような思いのまま、俺たちは、その子の部屋を後にした。