夜にサヨナラ【冨岡義勇】 (ページ46)

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したたかな玻璃① ページ46

それを知ったのは、後藤さんが隊服の依頼を持ってきたからだ。

「柱合裁判？」
「そっすよ。旦那さんから何も聞いてないんですか？」
「あの人がしゃべると思います？」
「……えーと、柱合会議ってのがそもそも半年に一回あって、まあ柱同士がなんかやってるやつです」
「なるほど。……流石に、こういった事を言って頂けないのは困っちゃいますね」

手渡された用紙にある名前は我妻善逸、嘴平伊之助、竈門炭治郎。
三人とも今年の選別で隊士になった子なのだろう、過去に一度も見たことのない名前だ。
恐らくまだ子供だろうか、使う布の枚数も少ない。
……純粋に、不思議なのだ。
私はあくまで一般人なので一般人の感覚として、御館様、という彼の存在や鬼殺隊について不思議に思う。
何故、年齢制限などを設けないのか。身長から見るにまだ15、6歳の子供に命懸けの戦いを強いる。
まだ未来のある子どもたちを鬼狩りにさせてしまうのはあまりにも残酷ではないのか。
そう思う反面、鬼に大切な人を殺されている人間にしてみたら既に世界は残酷なのだろう。
だとしても。選別には毎年多くの人間が参加して、生き残るのは僅かだという。
その試験の構造にも違和感しか無い。冷静になって考えてみれば「鬼殺隊」というのは何処か歪ではないだろうか。
組織としての違和感。私は外の人間だから感じてしまうのだろう。

「そうだ、たしかその竈門って子が水の呼吸使ってるらしいっすよ」
「へえ」
「それから鬼になった妹を連れてて、今日はその裁判があったんです」
「……後藤さん。その少年には、会えますか？」
「え？あ～……まあ、うん。蝶屋敷で療養してますからね」
「その子、旦那の弟弟子なんです。折角なので隊服が出来上がったら私自身がお届けに行きますね」

一度見てみたいと思っていた少年がすぐそこにいる。旦那の命が掛かっている少年。
竈門炭治郎。それから、その妹。会いに行こう、会って確かめよう。義勇さんには怒られるかな。
でも、あなたが悪いんですよ。何も言わないじゃないですか。ちょっとの勝手は許して下さいね。